研究課題/領域番号 |
26440224
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
本多 大輔 甲南大学, 理工学部, 教授 (30322572)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 分類体系 / 系統 / バイオエネルギー / メタゲノム |
研究実績の概要 |
ヤブレツボカビ科には17属が記載されているが,基準属である Thraustochytrium 属は,分子系統樹上で,多数の系統に位置することになっており,系統関係を反映した分類体系が構築できていない。そこで本研究では,Thraustochytrium 属の基準種である T. proliferum の系統的な位置を決定し,その上で形態や化学分類学的な形質を総合的に判断して,分類学的な整理を行うことを目的とした。 T. proliferum は,1936年にアメリカ,ウッズホールから採取された紅藻と緑藻の表面での観察をもとに記載されたが,この時の生物は分離されておらず,微生物保存施設などにも,この種として同定されているものは保管されていない。そこで,ウッズホールから当該の紅藻と緑藻などの採取を行い,培養株の分離と,採取物に含まれるDNAから,そこに生息する生物のリストを作成し,この種の候補となる生物の検討を行った。 これまでに,約1000株の分離を行い,予備的な観察から選択された100株は,18S rDNA配列から9つの系統群に分かれて位置した。これら9群を対象に詳細な観察を行ったが,T. proliferum として同定される株は得られなかった。 また,紅藻イギスからDNAを抽出し,含まれる18S rDNA配列を次世代シーケンサー(NGS)によって分析し,約64万リードを得た。そのうち,ヤブレツボカビ類の上位群であるラビリンチュラ類の配列として同定されたものは4600リードあり,既知の11系統群に分かれて位置することを確認した。これらについて形態観察を行ったが,その中に T. proliferum と一致するものはなかった。 以上のように,T. proliferum と思われるものは得られておらず,分類学的な考察には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
達成度としては,目標とした基準種 T. proliferum を分離することができておらず,分類学的な再編成に向けた作業が進行していないということで「やや遅れている」とした。しかしながら,分離作業およびその同定や観察,次世代シーケンサーによるメタゲノム解析などは,おおむね順調に進んでおり,今後の研究を推進するための基礎情報についても見いだせた状況となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサー(NGS)によるメタゲノム解析の結果,その配列数から豊富に存在すると考えられた系統群は,従来までの培養方法では,あまりよく増殖をしないものであった。しかしながら,全くこれまでに分離したことのない系統群の配列は確認されなかった。そこで,既存の培養株コレクションを活かし,増殖しにくい系統群の培養法の開発を行うことを新たなテーマとして設定した。また,特異的PCRプライマーのデザインが18S rDNAでは困難であることから,緑藻を対象とした NGS 解析ができていなかったため,新たな遺伝子配列を考慮した,特異的プライマーのデザインも実施する。さらに,2014年度でのウッズホールでのサンプリングでは取得できなかった緑藻ハネモを得るために,サンプリング実施時期の再検討も行うこととした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の計画では,次世代シーケンサーによる解析をより多い回数で実施することを計画していたが,緑藻ハネモを対象とする特異的プライマーのデザインに困難が生じたことで,解析実施回数が少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度は 18S rDNA 配列の中で特異的プライマーのデザインを考えていたが,他の遺伝子を考慮することを開始しており,今年度はデザインを終了して,次世代シーケンサー解析を実施する。
|