海洋性双翅目昆虫が、淡水から海水へ進出した起源地の可能性のあるインド洋に焦点を絞り、本グループの起源地、分散経路、種分化、多様性について解明することが本研究の目的である。全球レベルでの海洋性双翅目昆虫の分散と進化について解明する過程で、インド洋周辺が未調査であり、分散経路を推定する上で欠かせない地域であるインド洋を対象とした。 今年度はオマーン,カタール、セイシェル、モルディブにおいて調査を行った。これらの地域に固有な種(未記載を含む)を多数採集できた。特に今回の野外調査により、オマーンから海浜性のCymatopus属2未記載種とThambemyia属1未記載種、塩性湿地性のThinophilus属1未記載種が採集された。カタールではこれら海浜性のグループは採集されなかった。セイシェルからはCymatopus属2未記載種とThambemyia属1未記載種、砂浜のカニの穴を利用するArgyrochlamys属1未記載種、モルディブからはCymatopus属2未記載種とAsydentus属1未記載種が採集された。アラビア半島、セイシェル諸島、モルディブからイソアシナガバエ亜科のCymatopus属とThambemyia属の分布が初めて確認された。Thambemyia属はインド大陸での分布は記録されていたが、それより西の地域からの報告はなく、今回初めて分布が確認された。これらは新種の発見と共に分類学的に価値のある成果であった。
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