研究課題/領域番号 |
26440228
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 英祐 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40301874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Response threshold / Threshold variance / Collective decision / Collective rationality |
研究実績の概要 |
平成27年度は、アリのコロニー内のワーカー間の反応閾値の分散の適応的意義を明らかにするため、幾つかの実験及び解析を行った。まず、閾値分散が必然的に生み出す働かないハタラキアリの適応的意義を明らかにした。コロニーには常に処理し続けないとコロニー全体に大きなダメージを与える仕事があり、通常は閾値の低い個体がこれを処理しているが、それらの個体が疲労で働けなくなったとき、普段働かないアリは疲労していないため、代わりにその仕事をこなすことができる。よって、閾値分散という短期的生産性を下げる性質は、コロニーの長期的存続を保証するために進化したものと考えられた。コンピュータシミュレーションはそのような結果を示し、実際のアリでも仕事の交代が起こっていた。この成果はScientific Reports誌に公表した。また、閾値分散が合理的な意思決定を可能にするという、今まで考えられたことのなかった機構について、閾値をあらかじめ測定したシワクシケアリで実験した。その結果、6つのコロニー全てが、2択実験でより良い資源を選び、従来の資源価値に応じた個体の反応の集積が最適選択をもたらす斗いう仮説は棄却できた。したがって、合理的な集合的意思決定において、反応閾値の個体間分散は極めて本質的な役割を果たしていることが示された。この結果については、現在論文投稿中である(Yamamoto & Hasegawa in submitting)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、本格的な実験は3年目に行う予定であったが、予定を1年早めて実験を行うことができた。また、その結果は我々の予想通りであり、論文としてまとめ、投稿することができた(Yamamoto & Hasegawa in submitting)。したがって、最終年度には、これらの結果をベースに、より先の課題を追求することが可能となり、当初の計画以上に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
ある方法を使うことにより、コロニー内のワーカーの特定の刺激値に関する閾値を簡単にクラス分けできることがわかった。来年度以降はこの方法を用い、コロニー内の反応閾値の分布を測定した上で、分布を操作して、様々な興味深い課題を追求していくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、年度内に全額使用できるように発注をかけたが、幾つかの物品の納品が遅れ、会計上次年度繰越金額が生じた。したがって、これらに関してはすでに使用済みである。今年度に関しては、論文投稿の際の英文校閲代、掲載料の支払いのために必要な額を繰越とした。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度への繰越は、英文校閲代、論文の掲載料等に使用する予定である。
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