研究課題
本年度を含む研究期間で以下の成果が得られた。(1)有翅虫♂♀に創設させた有性生殖初期コロニーと、♀♀ペア創設の利己的個体を含む単為生殖初期コロニーの特性を比較したところ、後者の生存率とコロニーサイズは前者より有意に小さかった。ニンフ・ニンフ型生殖虫は単為生殖コロニーでだけ生じ、カスト決定遺伝モデルと合致した。通常コロニーと単為生殖コロニーを相互作用させる実験の結果、8組でコロニーの完全な融合が生じた。融合しなかった場合、7組ではコロニー間闘争で単為生殖コロニー側が死滅した。9組では一部の子個体が相手コロニーに取り込まれた。以上の実験結果は、単為生殖コロニーの生存率が非常に低く、このため単為生殖する成熟コロニーが野外で観察されない事を示唆する。単為生殖で生じたニンフ遺伝子型個体は生殖虫に分化し、コロニー内で対立を起こすが、有性生殖コロニーではそれが抑制されると考えられる。(2) ヤマトシロアリの初期コロニーを祖先シロアリのモデルに用い、激しいコロニー間競争下で、初期社会性進化の重要な段階である①コロニーサイズの増加と、②専業ソルジャーの出現がコロニーの適応度に与える影響を検討した。統計解析からともに大きな効果があることが初めて示された。(3) ヤマトシロアリで初期コロニーの融合実験を行った結果、血縁関係の影響(元々のペアに血縁がなく、相手コロニーの異性と血縁がある場合に融合率・生存率とも高い)がミゾガシラシロアリ科ではじめて示された。カンモンシロアリでは融合率はコロニーの血縁関係に依らず高かった。また、ヤマトシロアリの有翅虫が同巣由来の近親交配初期コロニーと、異巣由来の外交配初期コロニーの特性を比較する実験を行った結果、ペアの血縁関係による明確な差は見られなかった。(4) オオシロアリのコロニーの遺伝解析から、本種が多巣性であり、コロニー融合も起こすことを明らかにした。
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Insectes Sociaux
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10.1007/s00040-017-0553-z