開花時刻のスクリーニング調査(150種):昼夜咲きつづける花の開花パターンのクラスター解析から判明した3タイプ「朝咲き型」「昼咲き型」「夜咲き型」に、「開閉型」と「2山型」の2タイプを加えた5タイプについて、非線形回帰の手法を用いて各種花形質との相関関係を調べた。その結果、開花時刻には強い系統的な制約がみられる一方で、しばしば近縁種間でも大きく異なる傾向もみられ、花の咲く向きや開花季節との間に強い相関関係を示すことが明らかになった。多様な動物が異なる時間帯に訪れる数理シミュレーションを用いて、異なる開花パターンがそれぞれ進化的に有利になるための条件を探索したところ、観察された各種花形質との相関と矛盾しないことがわかり、送粉効率が異なる訪花動物を同時利用するための機会トレードオフ緩和戦略としての開花時刻の適応的意義が示唆された。現在、論文発表に向けて、これらの結果の妥当性をさらに検討中である。
また、イボタノキの花を訪れる多様な昆虫群の間で体表異種花粉率を比較したところ、これまで同一の機能群としてまとめられていた小型ハナバチ類、あるいはマルハナバチ類の中においても、雌雄や種間でしばしば著しい異種花粉の混合パターンが異なることが示唆された。これらの訪花昆虫はしばしば活動時間帯が一日の中でも異なっていることが多く、イボタノキのようにさまざまな送粉動物を利用する植物における開花時刻の進化に、大きな影響をおよぼしうることが予想される。
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