卵胎生魚類グッピーを用いて、派手な雄と地味な雄の頻度が異なる雄を雌に提示して、雌の配偶者選好性がどのように変化するか、さらにその後に雄と雌を配偶させて、雌が産んだ子の数や性比に雄への選好性などがどのような影響を与えているか検証した。 具体的には、オレンジ色のスポットの大きな派手雄映像と、オレンジスポットの小さな地味雄映像の割合が5:1(派手雄偏り)、あるいは1:5(地味雄偏り)の雄グループ映像を、雌に7日間提示し、その後、派手雄映像と地味雄映像に対する雌の配偶者選好性を計測した。次に、派手雄と地味雄映像の割合が逆転した雄グループ映像を7日間雌に提示して、雄に対する雌の選好性の変化を計測した。そして、派手な雄、あるいは地味な雄と雌を配偶させて、雌が産んだ子の数や性比と、雌の配偶者選好性の変化などとの関連を調査した。 その結果、いずれの雄グループ映像を1回目に雌に提示したかという順序が雌の配偶者選好性の変化に影響を与えており、1回目に地味雄偏りの映像を提示した雌は派手な雄に対する選好性が高いのに対し、2回目に派手雄偏りの映像を提示した後では派手な雄に対する雌の選好性が減少した。一方、1回目に派手雄偏りの映像を提示した雌では、派手な雄に対する選好性に大きな変化は見られなかった。雌が産んだ子の数にもっとも大きな影響を与えていたのは、雌の選好性ではなく、配偶した雄の背鰭の長さであった。雌が産んだ子の性比には、1回目にいずれの雄グループ映像を雌に提示したかという順序が有意な影響を与えており、1回目に派手雄偏りの映像を提示した雌に比べて、1回目に地味雄偏りの映像を提示した雌が産んだ子の性比は息子偏りとなった。これらの結果から、本種の雌が最初に目にした雄集団における派手な雄の頻度が、それ以降の雌の選好性や子の性比に影響を与えることが示唆された。
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