研究課題/領域番号 |
26440235
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
堂囿 いくみ 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70462489)
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研究分担者 |
牧 雅之 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60263985)
高見 泰興 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60432358)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 送粉系 / マルハナバチ / 形質置換 |
研究実績の概要 |
生態分化は,これまで資源競争と局所環境適応によって生じると考えられてきた。一方,繁殖干渉による形質置換を介した生態分化は,近年注目される現象であるがその実証例は未だ限られる。 カメバヒキオコシとセキヤノアキチョウジ(シソ科)は,同所的に生育している場合があり,共通の送粉者としてトラマルハナバチが観察され,交雑の可能性が考えられる。本研究では,カメバヒキオコシとセキヤノアキチョウジ間の交雑と生殖隔離の有無,同所的集団における繁殖干渉の検証と形質置換の有無を明らかにすることを目的とした。 東京都奥多摩地域にて,(1)交雑の可能性について,マルハナバチの訪花頻度の測定をしたところ,同所的集団(三頭山・神戸岩)ではトラマルハナバチが2種に訪花していた。三頭山のカメバヒキオコシでは,ミヤママルハナバチも多く訪花していた。(2)生殖隔離について人工受粉実験と発芽実験をおこなった結果,カメバヒキオコシでは異種交配は同種交配より種子生産が低くなり,発芽率も低かった。セキヤノアキチョウジでは果実ができなかった。(3)繁殖干渉について,同所的集団と単独集団で自然状態の種子生産を比較した結果,2種ともに同所的集団は単独集団より低くなった。(4)同所的集団の形質置換を検討したところ,花筒長は同所的集団と単独集団で差はなかった。開花フェノロジーは,同所的集団の三頭山では2種の開花フェノロジーのピークはほぼ同じであったが,神戸岩ではずれていた。 以上の結果から,2種間ではトラマルハナバチの訪花により交雑の可能性はあるが,生殖隔離があった。同所的集団では繁殖干渉が生じており,同所的集団の三頭山では形質置換が生じていないが,神戸岩では開花フェノロジーの形質置換が生じていることが示唆された。よって,近縁な植物間で生殖隔離があるとき,同所的集団では繁殖干渉の機会増加が形質置換をもたらす要因になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)調査地の草刈りの影響で,十分なデータがとれなかった。 2)栽培株の花付きが悪く,十分な受粉実験ができなかった。 3)種特異的なマーカーが見つかっていない。
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今後の研究の推進方策 |
1)開花フェノロジーのデータがきちんととれるように,草刈り回避方法を検討する。 2)栽培株は栽培条件を調節していく。 3)種特異的なマーカーについては引き続き検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年同様に,野外調査の旅費について,天候や日程の関係で宿泊することが少なく,日帰り調査が多かったため,予想よりも経費が少なく済んだ。 遺伝的解析については,サンプリングが多かったため,消耗品の費用が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,奥多摩地域以外にもサンプリングをするため,旅費がかかると思われる。また,遺伝的解析を精力的に行っていく。
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