研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)点パターンダイナミクスに関する様々なシミュレーションモデルの開発並びにモーメントダイナミクスの導出 感染症ダイナミクスの古典モデルであるSIRモデル、SISモデルを2次元空間上の点パターンダイナミクスとして構成した。点(個体)の状態が感染イベント(感染、免疫獲得など)に応じて確率論的に変化するモデルである。これに対応するモーメントダイナミクスを導出した。具体的には、各状態(S, I, R)にある点密度、6つのペア密度(SS, II, RR, SI, SR, IR)に関する力学系を積分微分方程式として導いた。トリプレット密度を点密度とペア密度で近似する(モーメントクロージャー)ことで、平衡状態における点密度とペア密度を解析的に導出し、シミュレーション結果との比較を行った。個体の出生死亡を無視した場合(点パターンは固定され、点の状態のみが変化する)、モーメントダイナミクスとシミュレーション結果は極めて良い精度で一致することを見いだした。一方、出生死亡を考慮した場合、モーメントダイナミクスはシミュレーション結果をよく説明できず、モーメントクロージャーに関する問題点を浮き彫りにした。 2)点パターンとしての模様の定量化 生物種の多くは捕食回避や対捕食者警告として多様な模様を持つ。「模様」の定量化は古くから様々なアプローチに基づく試みが行われてきたが、今年度、模様を点パターンとして見なし、ペア密度分布の関数型を用いて定量化することを試みた。具体的には、鳥類育児寄生で焦点となる宿主と寄生者の卵模様である。卵の写真から多数の点から構成される点パターンを作成してペア密度関数を求め、2つの卵のペア密度関数の違いをKL-divergence等の指数を用いて定量化した。
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