数理モデルを用いて、嗜好植物、不嗜好植物と植食者からなる系で栄養塩の循環の影響を調べた。この系で、植食者の嗜好が極端で不嗜好植物をほとんど食べないときには激しい振動が起こり、不嗜好植物の長期にわたる優占が続く。これに対して、栄養塩の循環によって起こる振動は、正弦波に近いおとなしいもので、嗜好植物も不嗜好植物も植食者も極端に減ることはない。つまり、もともと植物と植食者の間の食うものと食われるものの関係によって振動傾向にある系で、栄養塩の循環は利用可能な栄養塩を増やし,植物と植食者の密度をともに底上げしておだやかな振動を永続させる効果を持つ。この系で、不嗜好植物の餌としての質が良くなり、植食者が不嗜好植物も少し食う場合には、外部からの栄養塩の流入が多くなると、見かけの競争によって嗜好植物が絶滅する。植食者や植生の管理にあたっては、栄養塩の流入や循環を通しての系の豊かさにも十分に配慮する必要がある。 ギルド内捕食系で、ギルド内被食者とギルド内捕食者の自己調節を考慮して基底資源の内的自然増加率の増加が系の動態に及ぼす影響を調べた。ギルド内被食者とギルド内捕食者の自己調節は系を安定化するが、特にギルド内捕食者の密度依存性が強くなりトップダウンの効果が弱まると、基底資源の内的自然増加率がどんなに大きくなってもギルド内被食者は決して絶滅せず、理論と実証の乖離を説明する要因となり得ることが明らかになった。この系に、ギルド内捕食者を食う上位捕食者を加えた場合には、ギルド内捕食者によるギルド内被食者の捕食と消費型の競争が弱まるために4種共存が実現する。3種系ではギルド内被食者が絶滅する場合にギルド内被食者もギルド内捕食者も食う上位捕食者を加えた場合には、ギルド内被食者の餌としての質によって、ギルド内捕食者が絶滅してギルド内被食者の存続が可能になるか、または4種共存が実現することが分った。
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