春孵化個体を低温で1ヶ月間保存したところ、成熟したのは1個体のみであったが、通常通りに成熟させた1個体との間に、模様のでき方および黒色率に大きな違いは無かった。ギンメッキ親子60組で体色の相関を調べたところ有意性は見られず、世代ごとに解析しても結果は変わらなかったことから、その遺伝性については確認することができなかった。また、ミナミノシマゴミグモについても、体色の遺伝性については確認することができなかった。ミナミノシマゴミグモおよびゴミリボンの50点からRGB値を注出し、またRGB値をグレイスケール値に変換したものも用いて判別分析を行った結果、クモはクモ特有の色をもっており、クモが乗っていたものを含むゴミリボンとはそれほど似ていないことが明らかになった。 ギンメッキゴミグモの網に衝突するエサのショウジョウバエの飛行経路を、同期させた2台の高速カメラから三次元化した。その結果、エサは衝突の0.1~0.2秒前に大きく進路変更し、その後ほぼ直線的に網に衝突することがわかった。飛行経路とクモの体色との関係ははっきりしなかった。 これまでの自然個体群の観察から得られたゴミグモ属における体色と餌誘因能の関係、体色と網場所選好性との関係、生涯交尾数についての結果を組み込み、体色変異の進化をシミュレーションする個体ベースモデルを作成した。本モデルでは、初期値としてすべての個体が同じ色を持つ単型の個体群を想定し、世代間で体色が突然変異によりわずかに変化すること、網場所は明暗二タイプがあり明所はエサ量が多いが体色により熱による生理的コストがあること、また体色によって採餌量が影響を受けることを仮定している。その結果、単色だった個体群に変異が生じ、長期間維持される場合があると言う結果が得られた。また単色個体群と変異個体群の二個体群を初期値とした場合、両個体群が長期間共存するという結果も得られた。
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