研究課題/領域番号 |
26440254
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
西海 功 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (90290866)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フクロウ / 放射性物質 / 生態濃縮 / セシウム / 陸上生態系 / 猛禽 |
研究実績の概要 |
チェルノブイリと福島の原子力発電所の事故によって多量の放射性物質が環境中に放出され、放射能の環境中での動態や生物への影響について多くの研究がなされている。陸上生態系ではその頂点に位置する猛禽類が汚染地域で特に減少していることが知られるが、それは放射性物質の生態濃縮と生態系のバランスの崩れの両方が影響していると思われる。本研究ではフクロウの巣箱を利用して餌として巣に運ばれる森林性小型哺乳類・鳥類・ヘビ類の種と数およびセシウム137の濃度を調べ、また、低線量被曝がフクロウに及ぼす生理学的・生態学的・遺伝的な影響を調べる。 初年度である平成26年度には、既設の6つの巣箱での予備的な調査と巣箱の増設をおこなった。春には、飯舘村、福島市、土湯温泉町にそれぞれ2個ずつ設置した巣箱のうち、福島市の2個と土湯温泉町の1個で繁殖利用が確認された。巣箱上部からのビデオ撮影は、親鳥の出入りや行動は記録されるが、餌の撮影は難しいことが判明した。巣立ち後の巣内残渣を調べることで、餌生物を特定する必要があることがわかった。餌生物は育雛期前半に巣内に放置されることが多く、育雛期後半ではほとんど放置されないことがわかった。 PHA検査は免疫反応による腫れが非常に少ないことがわかり、ソフトタッチマイクロメータ(㈱ミツトヨ)による計測が必要なことがわかった。フクロウの巣箱利用率、産卵数、孵化率、巣立ち率の調査には多数の巣箱設置が必要なことがわかった。そこで、10月には、飯舘村と福島市(汚染地域)、土湯温泉町(低汚染地域)、会津若松市(対照地域)において計83個の巣箱を設置して、27年度の調査の準備を整えた。 鳥類相調査は予定通り7月に実施して、その成果論文はJournal of Ornithologyに受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
簡易な自動撮影装置による餌生物の特定が困難なことがわかり、また、予定していたホールバディーカウンターでの内部被曝量の計測が、IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)の調査が打ち切られたために実施できなくなるなど、独力での調査では、計画通りに進めることが困難な点があることがわかった。しかしながら、計画で予定していた10個の巣箱設置を80個に増やして、フクロウの巣箱利用率、産卵数、孵化率、巣立ち率の調査に重点を移すことで対処しているので、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、自動撮影装置による餌生物の特定とホールバディーカウンターでの内部被曝量の計測においては、困難が判明したため、フクロウの巣箱利用率、産卵数、孵化率、巣立ち率の調査に重点を移すことで対応する。餌生物の放射能(セシウム)含有量は、巣箱に貯めた死体やペレットの放射線量を計測することで調査をおこない、鳥類センサス調査も予定通り継続する。
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