研究課題
本研究の目的は、水田稲作農耕の起源地である長江下流域に位置する広富林遺跡出土の新石器時代人骨群を整理・基礎分析を行うことによって、人類の水田稲作への適応状態を明らかにすることにある。平成28年度は、9月および2-3月に各3週間、計1ヶ月半にわたって研究代表者や連携研究者から構成した自然人類学者6名のチームを中心に現地にて整理作業を行った。その結果、当初の目標であった2010年度出土人骨については、整理作業が完了し、現在、基礎分析の結果をまとめている。また、今後の再調査に備えてこれらの資料の収蔵環境を整えた。個体数は、計183体(崧沢文化期129体、良渚文化期30体、広富林文化期1体)になった。年齢別にみると、未成人、特に周産期もしくは乳児期の個体比率が非常に低く、これらの年齢群は成人とは異なる墓域に埋葬されたと考えられた。性別でみると、壮年期(20~40歳)では、女性の死亡率が男性の2倍となり、出産という女性特有の因子が関与している可能性が浮上した。放射性炭素年代測定に関しては、研究分担者らによって、炭化物15点、動物骨4点、人骨(散乱骨)3点の年代値が示され、考古学的年代と概ね一致することが分かった。昨年度に確認された結核症例については、より詳細な考古・人類学的情報を確認もしくは再分析し、6月にボストン大学で開催された国際学会The 6th Worldwide Conference for the Society of East Asian Archaeologyにおけるシンポジウムにて発表した。また、2月に日中国際共同研究成果講演会を下関市と東京都で開催し、海外研究協力者らと共に現時点の成果を発表した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (2件)
Quaternary International
巻: 405 ページ: 34-43
http://doi.org/10.1016/j.quaint.2015.03.010
http://doigahama.jp/koufulin/index.html