上海市広富林遺跡出土の新石器時代人骨183体をクリーニング・整理した。その結果、若い成人女性の死亡率が比較的高い傾向がみられた。頭蓋計測値に基づく形態距離は、地理的に近いWeidun新石器集団に近似するが、河姆渡新石器頭蓋骨と華南新石器集団からは離れていた。これは、人骨のSr同位体比に基づく出自推定の結果とも矛盾しない。しかしながら、Weidun新石器集団とは、成人儀礼として施工された抜歯様式に大きな差異がみられ、新石器長江下流域における人類史が複雑であったことを示唆する。女性1個体において結核症例が認められ、当時、結核菌の生存に必要な人口規模と密度を擁していたことが分かった。
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