研究課題/領域番号 |
26440261
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岡田 明 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (30158810)
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研究分担者 |
渡部 嗣道 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (90314822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体性感覚 / 操作方向 / 一側優位性 / ヒューマンインタフェース / 操作パフォーマンス |
研究実績の概要 |
この研究は,体性感覚や身体を基準とした方向認知の特性を機器操作系へ適切に反映させることにより,安全で操作しやすいヒューマンインタフェースの構築を目指すものである.サブテーマとして,1.身体および一側優位性に基づく操作方向と出力方向の対応関係,2.ヒューマンインタフェースにおける手ごたえ・触感の認知,の2つを設定している. 1については,まず利き手・非利き手でのキー操作における認知特性の差異を明らかにするため,以下の実験を試みた.すなわち,タッチパネル上の配列の異なる数種のテンキーの入力操作をそれぞれの手で実施した結果,当初は手の一側優位性の影響は見られないものの,その後は利き手の方が慣れの効果が優位であり,それぞれの手が有する固有の座標軸が異なっている可能性が示唆された.また,NIRS(近赤外分光法)および心電図を用いた生理評価では,利き手,非利き手操作による差異までは明らかにできなかったものの,操作エラーによる精神的ストレスの変化を一部捉えることは可能となった. 2については,触力覚提示装置による手ごたえの効果を検討するための実験ソフトの開発と,それを用いた実験を試みた.すなわち,触力覚提示装置を用いてタッチパネル上のテンキーを押す際のクリック感をバーチャルリアリティ的に得られるソフトを開発した.さらにそれに基づく実験を行ったところ,キーのクリック感が操作パフォーマンスの向上に寄与することが明らかになったことと共に,その特性が利き手と非利き手で異なることもわかり,サブテーマ1とも関連する結果が得られた.また,手ごたえだけでなくキー周辺の物理的手がかりも操作パフォーマンス向上に重要であることや,指の微細な操作には母指が大きく関与していること等も,関連する一連の実験から明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ1:1年目は特に手の一側優位性に着目し,利き手・非利き手での操作上の認知特性の差異を明らかにする計画で以下の実験を試みた.すなわち,タッチパネル上のテンキーの入力操作によるパフォーマンス実験の結果,利き手と非利き手では慣れの影響に加え,それぞれの手が有する座標軸が異なっていることが認知に影響を与える可能性を示した. サブテーマ2:触力覚提示装置による手ごたえの効果を検討する計画で以下の実験ソフトの開発と実験を試みた.すなわち,触力覚提示装置を用いてタッチパネル上のテンキーを押す際のクリック感をバーチャルリアリティ的に得られるソフトを開発した.さらにそれに基づく実験を行い,クリック感が操作パフォーマンスの向上に寄与することを明らかにすると共に,その特性が利き手と非利き手で異なることもわかり,サブテーマ1と関連する結果が得られた. ただし,生理的評価としてのNIRS等の計測はまだ一部しか試みておらず,また条件設定の拡張も十分ではないことから,上記の達成度の区分となった.
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1については,26年度に実施した実験の延長線として,条件を増やした実験を計画する予定である.また,生理的指標での評価が十分できなかったことから,特にNIRSを中心とした計測の質を高めていくつもりである.なお,fMRIによる実験の可能性についても検討したい. サブテーマ2については,まず触力覚提示装置で可能な機能を拡張するためのソフト開発を引き続き進める予定である.また,同装置の操作部の形状に制約があるため,オプションやアダプタを取り付けることによる操作形態の拡張も検討したい. 以上の計画に基づき,27年度はデータの蓄積を継続していく.さらに,28年度にはこれらの結果を融合させ,新たなヒューマンインタフェースデザイン提案につなげることを考えていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用ソフトの開発は,業者委託をせず大学院生に依頼することで対応できた(謝金の対応で済んだ)こと,実験用操作システム,センサーシステムは一部既存のもので充当できたこと,学会発表旅費は遠隔地でない場所の日帰り出張だったこと等により,当初予算額より少なくて済んだ. 今年度の実験結果を踏まえ,その分次年度は以下に示すとおり新たな条件での実験のための装置購入に充てる.
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次年度使用額の使用計画 |
サブテーマ1については,生理計測の質を高めるための装置ユニット等の購入,多チャンネルNIRSあるいはfMRIの外部委託計測等を検討している. サブテーマ2については,触力覚提示装置の改良や関連ソフトの購入または開発,手の微細動作解析のためのシステム購入等を検討している.
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