研究課題/領域番号 |
26440263
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
垣鍔 直 名城大学, 理工学部, 教授 (30259874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体温調節 / 発汗発現時の体温 / ふるえ発現時の体温 / 性差 / 日内変動 |
研究実績の概要 |
平成26年に男女2群を対象に被験者実験を行った.男性被験者10名を対象に,一人の被験者に対して,朝,昼,夕方の3回連続して実験を行った.温冷感覚閾値の測定は,前腕内側中央,上腕内側中央,大腿前面中央の皮膚温から徐々に表面温度を一定の変化率で変化させられるプローブを皮膚面に密着させ,温度を上昇または下降させ,温度変化を感じることが出来る閾値を測定した.発汗とふるえが発現する時の体温差(CIZ)の測定は,被験者に冷却循環スーツを着衣してもらい,最大運動負荷の50%負荷(W)でエルゴメータ作業をさせ,前額での発汗が開始するまで運動を継続させた.その後安静にしてもらい,酸素摂取量が亢進するまで体冷却を継続した.その結果,温覚の日内変動はほとんどなく,冷覚は朝が低く,昼と夕方で高く,朝と昼で大きくなったことから,温冷感覚閾値差は朝が高く,昼,夕方につれて小さくなることを確かめた.また,CIZは朝から夕方にかけて小さくなる傾向を確かめた.女性被験者を対象とした実験では女性被験者10名を対象実験を行った.実験内容及び方法は男性被験者を対象とした実験と同様であるので,結果のみを記述する.温冷感覚閾値の日内変動に関しては,有意差は見られなかったが,全体として小さくなる傾向が見られた.冷覚閾値は,朝から昼にかけ有意(p<0.05)に高くなった.また,CIZの日内変動に関しては,実験時の常時直腸温は朝から夕方にかけて低くなった.日内変動が小さくなる傾向を示したものの,標準偏差が大きかったため,時刻条件間の有意差はみられなかった.以上の結果から,CIZには日内変動が認められ,性差も確認された.しかし,体温のリズムがない場合の結果であり,ある場合の結果と比較することで,そのメカニズムの解明が進むと考えている。平成27年度は,男性被験者8名に対して,体温の日内リズムを確保した条件で実験を再現した。現在,データ分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
午前中のCIZ(発汗発現時の体温とふるえ発現時の体温の差)は,発汗の閾値が低くなるがふるえの閾値が有意に低くなることが予想され,CIZが大きくなることを予測した。一方,午後は体冷却側に敏感になるのでふるえの閾値が高くなり,発汗の閾値は午前中とあまり変化しない可能性があり,CIZが小さくなることを予想した.また,男女差に関しては,筋力等の違いがあるので,女性の場合,ふるえの閾値が男性より低めに発汗の閾値は高めになることを予測した.この仮説を証明するために,3年間の研究期間で,①体温の日内変動がない一定の場合のCIZの日内変動と②体温のリズムがある場合のCIZの日内変動を男女それぞれを対象に実験を実施する計画を立てた.つまり,合計4回の実験を計画した。現在は3回まで終了しており,この夏に最後の実験を試み,全てのデータを収集した後に,結果をまとめる予定でいる.
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今後の研究の推進方策 |
体温のリズムがある場合のCIZの日内変動を検証するために,女性被験者を対象とした実験を今年度の夏に計画している。被験者数は6名~8名を予定しており,現在,リクルート中である。実験前に健康状態を確認した上で,一連の実験に参加してもらう予定である。実験方法は,申請時に記述した方法を用いる。25℃,50%に温熱環境を制御した人工気候室内で30分間安静にしてもらい,その間に冷水循環スーツを着衣し,センサー類を取り付け,エルゴメータに椅座してもらう。その間の生理反応を確認した後に,最大運動負荷の50%の負荷に設定し,一定の運動負荷を与える。運動後10分~20分で発汗が誘引されることを確かめており,発汗を確認した後,直ちに運動を停止させ,その後は静止した状態で約90分安静にさせる。実験室内の照明条件はCIZの個人差を最大限に誘引させるために高照度(1000lx~1500lx)とする。皮膚温が一定の状態で徐々に体温が低下し,ふるえが発現した時点で実験を終了する。実験中は,代謝量(呼吸代謝装置,VO2000,S&ME社製)を用い,皮膚温(4点)と直腸温は体温ロガー(グラム社製)を用い,前額における局所発汗量は発汗測定器(スキノス社製)を用いて測定する。さらに,生理反応として,皮下組織の温度分布の個人差を知るために,コアテンプ(深部体温計,テルモ社製,CM-210)と皮膚血流量(レーザー血流量計,(株)インテグラ社製,PeriFlux-System5000)を用いて測定する。平成26年度の実験と異なり,1人の被験者に対する実験は,Day1に朝の実験,Day2に昼の実験,Day3に夜の実験を行う予定である.そのことにより,日常生活における体温のリズムを再現した状態でのCIZの計測が可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゼロにするつもりだったが,謝金や消耗品などの実際の金額と予算額の違いで,30,000円弱次年度に繰り越してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,最後の被験者実験を実施する予定で,それに係る費用に充てる予定である。
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