研究課題/領域番号 |
26450009
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
清水 顕史 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40409082)
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研究分担者 |
山崎 将紀 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00432550)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 栄養ストレス耐性 / 全ゲノム関連解析 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、ゲノム全域に渡るSNPs情報が利用可能な日本の栽培および在来イネ112品種を、滋賀県立大学圃場実験施設内の貧栄養水田および低リン水田で栽培し、調査した収量関連形質について全ゲノム関連解析を行った。栽培実験開始前の土壌分析により、18年連続で無肥料無農薬管理された貧栄養水田は、可給態リン濃度(P2O5 mg/100g)が5.78±0.55と非常に低く、14年連続で無肥料栽培した低リン水田も9.31±1.03と低水準であることが確認できた(低リン水田は平成26年度にチッソとカリを施肥した)。イネ112品種を、チッソ・リン酸・カリウムを配合した苗床およびチッソとカリウムは同量でリン酸のみ1/60にした苗床の2種類で育苗し、貧栄養水田および低リン水田に各系統7個体程度ずつを移植した。分げつ数、SPAD値、出穂期、百粒重、稈長、穂長、一穂粒数、玄米の元素含量を調べ、4通りの栽培条件(苗床2種類×水田2種類)別に全ゲノム関連解析を行った。調査形質は育苗条件よりも圃場条件に強く影響をうけることが明らかとなった。穂数や一穂粒数などで有意な染色体領域が検出でき、現在は結果の詳細をまとめているところである(H27年、H28年の調査結果も年次反復データとして使用する)。 また圃場実験に先行して、水耕栽培した112品種のイネの、48穴プレートを用いた多検体用の根分泌液回収システムを開発し、フィチン態リンの無機化能力について全ゲノム関連解析を行った。この形質は反復実験による検証も済んでいて、染色体12に有意な遺伝領域が検出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、学内の貧栄養水田を用いたイネ112品種の栽培と形質調査および全ゲノム関連解析を行うことができた。研究目的である、収量関連形質に関する有意な染色体領域の検出もできている。 水耕栽培で調査できる栄養ストレス耐性形質として、48穴プレートを用いた多検体用の根分泌液回収システムを開発し、フィチン酸など不可給態リンの可溶化能を評価し、全ゲノム関連解析により有意な染色体領域を検出した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度と同様に、貧栄養水田および低リン水田で112品種を栽培し、年次反復結果を得る。今年度は育苗条件を1種類に減らし、貧栄養水田および低リン水田の2種類の水田条件で、各種形質調査を行う。また、貧栄養水田の穂数に顕著な品種間差のみられたコシヒカリとユーカラに由来するRILs (95系統)を今年度は貧栄養水田で栽培し、穂数とその他の形質についてQTL解析を行う。H26、27年度で再現性のみられた収量関連形質の品種間差に基づき、H28年度にも栄養ストレス耐性関連形質のQTL解析を行う予定である。 また、多検体用根分泌液回収システムを使って評価できるフィチン態リンの無機化能については、品種間差のみられた両親に由来するRILsを2種類(各96系統)用いてQTL解析を行い、原因遺伝子領域を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
無機分析に用いる酸分解装置は、グラファイトブロック製のものを予定していたが、高精度メタルバスに一度に108検体を酸分解可能なアルミブロックを組み合わせたものに変更した(グラファイトブロックの方が分解に要する時間は短いが、多検体のアルミブロックは単位時間あたりに分解できる検体数が多いため)。グラファイトブロック製の分解装置では、多検体の処理のため分解容器を消耗品として多数購入する予定であったが、その必要がなくなったため予算が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度の予算の余りは、27年度に予定しているRILsの遺伝子型決定に必要な消耗品の購入に使用する(直接経費の「その他」項目に該当する)。
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