ゲノム全域に渡る3232個のDNA多型情報が利用可能な日本のイネ集団112品種を用いて、低投入型イネ品種の育成に役立つと思われる収量関連形質を調べ全ゲノム関連解析(GWAS)を行った。また、無施肥水田で品種間差の観られた穂数については組換え自殖系統(RILs)を用いたQTL解析を行い、GWASの結果と比較した。
18年以上連続無施肥で栽培してきた学内圃場実験施設にある水田で、日本のイネ112品種を2016年から2018年の3ヵ年栽培し、到穂日数や稈長と収量関連形質(穂数、一穂粒数、粒重など)を調査した。GWASの結果、到穂日数は染色体6の1カ所および染色体7の2か所の既知の出穂関連遺伝子座領域に有意なマーカーが検出され、他の収量関連形質についても3ヵ年で共通の有意なマーカーを検出することができた。特に2016年の調査結果で大きな品種間差のみられた穂数については、穂数の少ないコシヒカリと穂数の多いユーカラとのRILsを用いた栽培実験を2017、2018年に行った。その調査結果を用いたQTL解析により、穂数に関する遺伝子座を染色体7に検出することができた(2ヵ年とも)。また、RILs中に穂数が多いだけでなく出穂日や一穂粒数がコシヒカリ並みとなる系統も幾つか見つけることができた。これらの系統は、低投入持続型農業に適したイネ品種の育成に役立つ遺伝領域の特定に使用可能であり、再現性の確認を含めた続きの栽培実験を現在行っている。
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