日本のダイズ9品種(エンレイ・コガネジロ・植系32号・白鶴の子・トヨハルカ・トヨホマレ・トヨムスメ・丹波黒・スズマル)を用いて水耕栽培システムで根域低酸素耐性を品種間比較したところ、低酸素耐性と根の通導抵抗の変動に密接な関連性を見出した。この根通導抵抗が変動した理由として、多くの品種では、根域低酸素下での根形態デザインの変化に言及できたが、もっとも低酸素耐性の高かった‘植系32号’においては、根形態変化に加え、根の透水抵抗に影響すると思われる水チャネル、膜内在性タンパク質のアクアポリン の一種‘PIP1;1’の絶対量が低酸素下で増えており、このことも‘植系32号’の低酸素耐性、ひいては耐湿性の強さに貢献しているものと考えられた。 前年度までに、乾燥種子の冠水耐性が大きく異なるフェノタイプを示す2系統‘TK780 x B01167’を親とするRILs(85系統:親含め87系統)を用いて発芽試験の測定を行い、QTL解析によって、種子冠水耐性に対し影響度が有意とされた遺伝子座5つを検出し、種子の硬実性や吸水特性への影響度の高い遺伝子座との一致性について解析した。現在結果を執筆中である。 また本研究を通し懸案の、根通導コンダクティビティや種皮透水性に影響すると考えられた水チャネルを構成するタンパク質、アクアポリンの原形質膜上局在を視覚化するべくフリーズフラクチャーレプリカ法の変法、SDS-FRL法の本試験への適用は、各種酵素による微繊維除去が困難を極め、研究期間内でのTEM観察での明瞭な可視化には至らなかった。今後は規模縮小の上、本手法について試行する予定である。
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