| 研究課題/領域番号 |
26450017
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| 研究機関 | 新潟大学 |
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研究代表者 |
渡邊 肇 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10292351)
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| 研究分担者 |
西村 実 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60391570)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | イネ / 直播栽培 / 作物学 |
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| 研究実績の概要 |
イネの中茎伸長性について本年度では，以下の実験を行った．① ABAにおけるイネ中茎伸長促進作用の生理的機構：解析対象物質のサンプリング時期を決定するために，中茎長の経時変化を検討した結果，対照区では，播種4日後に伸長が終了したが，ABA処理区では，播種8日後まで伸長がみられた．次に，対照区とABA処理区の炭水化物分解酵素と糖含量の点から検討した結果，予想とは異なり，ABA処理区では，播種6日後までの炭水化物分解酵素の活性が，対照区よりも低く推移した．また，可溶性糖類の含量も，ABA処理区は無処理区に比べて少なく推移した．一般に，種子の発芽や胚の成長を促進する際には，炭水化物分解酵素の活性化と可溶性糖類の増加がみられるが，中茎の伸長ではむしろ逆の現象がみられるという，作物生理学的に興味深い結果が得られた．この結果から，次年度以降は，イネの中茎伸長に関する糖代謝の関連要因について精査する必要があると考えられた．② イネ中茎伸長促進作用の遺伝的機構：供試品種の中に，中茎の伸長性が著しいものをみいだした．通常，日本型品種はインド型品種に比べて，中茎の伸長量が小さいため，本品種は，中茎伸長性の遺伝的特性を検討する上で有益な材料と考えられた．また，種子に核種の異なる放射線を照射して突然変異を誘発し，圃場条件下で栽培後，次年度で解析可能な後代種子を得ることができた．③ ABA処理における直播水稲の生育：種子浸漬法によりABA処理した種子は，催芽が不揃いとなり，播種後の生育にばらつきがみられたことから，現在のところ，ABAの種子への処理法をさらに検討する必要があると考えられた．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ABAにおけるイネ中茎伸長促進作用の生理的検討については，伸長作用がみられるABA処理では，炭水化物代謝に関与する酵素活性や可溶性糖類の含量が対照区よりも低いという，既存の研究例とは異なる，作物生理学上，興味深い結果が得られた．本課題を推進するためには，遺伝子発現の調査の前に，この現象の解析や原因を優先的に究明する必要があり，遺伝子発現の解析を次年度以降に行うこととなった．また，中茎の遺伝的機構の検討については，用途の異なるイネ数品種に，核種の異なる放射線を照射し，発芽可能な多くの後代種子を得ることができ，次年度以降への実験の準備を整えることができた．また，日本型イネでありながら，中茎の伸長量が極めて大きい，作物学的に興味深い品種をみいだした．ABA処理における直播水稲の解析については，処理籾の催芽状態や生育が不揃いであったため，ABAの効果が安定的にみられる処理法の検討が必要と考えられた．なお，ABAにおけるイネ中茎伸長促進作用の生理的検討やABA処理における直播水稲の生育に関しては，ABAの生育促進作用に関する研究例が極めて少なく，成書や論文による情報も希少であることから，単年度では十分な結果が得られないことは，申請時から予想していたため，次年度以降にさらに検討を続ける予定である．
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| 今後の研究の推進方策 |
① ABAにおけるイネ中茎伸長促進作用の生理的機構：ABA処理における，炭水化物分解酵素の活性や可溶性糖類の含量について詳細な解析を行うと共に，新たな炭水化物分解酵素に着目する．また，ABAの遺伝子発現については，成長に関する他の遺伝子（細胞の伸長や分裂に関与する遺伝子など）も候補に入れて，解析を試みる．② イネ中茎伸長促進作用の遺伝的機構：用途の異なるイネ数品種由来の放射線照射種子を材料に，実際にイネの中茎の伸長性を野生型と比較する．それに加えて，平成26年度で新たに見いだされた，中茎伸長性の高い日本型品種を材料に，中茎伸長に関する遺伝的特性を検討する．③ ABA処理における直播水稲の生育：ABA処理法を種子浸漬の段階から，再検討すると同時に，酸素発生剤や補助剤の使用を行い，安定した作用がみられるABA処理法を検討する．また，これらに加えて，種子内の内生ABAを高めたり，中茎伸長を促進するとされる，各種種子処理の有効性を検討する．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当初，平成26年度では遺伝子発現解析用のPCR解析システム一式を計上していたが，ABA処理が炭水化物代謝に関与する酵素の活性や，可溶性糖類の含量に及ぼす影響が，既報とは異なるという作物生理学的に興味深い結果が得られ，この解析と原因の究明が，本申請課題を推進する上で，不可欠であったため，遺伝子発現の解析を次年度以降に行うこととなった．従って，PCR解析システム一式の経費や遺伝子発現の解析に使用する試薬品等の経費を次年度以降に繰り越すこととなった．
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| 次年度使用額の使用計画 |
繰り越したPCR解析システム一式の他に，物品費（主に，破砕機，試薬品・ビーカなどの消耗品），旅費（学会発表，研究調査など）など，本申請課題を推進するために使用を予定している．
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