コムギの枯れ熟れ様登熟不良は,登熟期に急激に茎葉や穂が枯死する登熟障害である.本研究では,枯れ熟れ様登熟不良を発症する個体では,登熟初期に根からの窒素吸収量が子実の窒素要求量に追い付いていないこと,および,それが葉のタンパク質や色素の分解を早め葉の黄化や枯死を促進することを示すことを目的とした.また,施肥設計を見直して幼穂形成期以降に集中的に施肥する後期重点施肥によって,発症による被害を軽減できるかどうかも検証した. 2015/16年作期でも,熊本県農業研究センター,JA菊池および熊本県菊池地域振興局農林部農業普及・振興課などの関係機関と協議して,枯れ熟れ様登熟不良が発症しやすいとされるダイズ後作圃場を選定し,慣行型分施区と後期重点型施肥区を設けた.いずれの処理区においても,茎立ち期以降から茎葉や穂の試料を7~10日おきに採取して窒素含有率や含有量の推移を調査した. 2015/16年でも周辺のコムギの登熟と比べて異常な早枯れは認められず,枯れ熟れ様登熟不良は発生しなかった.後期重点型施肥区の個体は,基肥や分げつ肥を施用しなかったにもかかわらず,穂肥を増肥することで穂数が多くなり反収が慣行施肥区と同等であった.穂数は,基肥や分げつ肥を施用しなかったにもかかわらず,無効化しやすい主茎第2節分げつの有効茎歩合が高まり,多くなった. なお,周囲の圃場との比較から,早く枯れた圃場では播種時期が早く,初期成長が旺盛であった圃場で枯れ熟れ様登熟不良が発症していた可能性が示唆された.
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