研究課題/領域番号 |
26450022
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
豊田 正範 香川大学, 農学部, 教授 (30284350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光質 / コムギ / 群落内光環境 / R:FR / 物質生産 |
研究実績の概要 |
26年度前半において,まず,圃場条件下でR/FR比を変化させる処理方法の検討を行った.光質の制御方法として,特定波長域の光を吸収する光質コントロールフィルムを利用する方法,およびLED等の光源による特定波長照射による用いる方法が考えられる.そこで,圃場環境下で使用できる全天候型のLEDおよび蛍光灯照明装置の既製品の探索とカスタマイズを行った. さらに26年度前半には,光質を測定するシステムの構築をおこなった.当時まで使用していた波長別光エネルギー分析装置がメーカーの保守対象外となり測定値の校正ができなくなった.このため赤色660nmおよび遠赤色720nmの2つの単波長のみを測定するセンサーと光量子センサーをコンパクトにまとめてロッドの先端に固定し,そのロッドを群落内に挿入することで,群落内の任意の位置のPARとR:FRの瞬間値を測定・記録できるシステムを新たに構築した. 以上で完成した全天候型の赤色LED照明および対照区としての白色蛍光照明をダイズ圃場に設置し,約2ヶ月ほど実際に光質処理を実施して,計画している光質処理が可能であること,台風等の悪天候下でも浸水や破損せず,安定して使用できることを確認した.また,光質を測定するシステムを試用して定期的にダイズ群落内の光質の変化を測定した.その結果,従来の波長別光エネルギー分析装置でよりも短時間で多点の測定が可能であり,より平均的な測定結果が得られることが判明した. 26年11月からはコムギの試験を実施中である.光質処理として,遠赤色光をカットする光質コントロールを用いた高R/FR処理,赤色LED照射による高R/FR処理,遠赤色LED照射による低R/FR処理を実施しており,発育形態に関する指標(最大茎数,出葉間隔,相対分げつ増加率)に対する影響を中心に調査を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度前半には計画どおりに圃場条件下で使用できる全天候型の光質処理システムを構築し,夏期のダイズを用いた予備試験を経て,計画どおりの光質処理が可能であることを確認した.また26年度前半には,従来の波長別光エネルギー分析装置に変えて,データロガー,単波長センサーおよび光量子センサーを組み合わせた新しい光質測定システムを構築した.機動性が高く,短時間で多点測定が可能となったことで,従来よりもより信頼性の高い測定が可能となった. 以上を経て,26年11月からは予定どおりコムギの栽培試験を実施中である.なお,交付申請書では処理として栽植密度を想定していたが,植物に照射する光自体を変化させた方が植物体への影響がより確認しやすいと考え,FRをカットする光質コントロールを用いた高R/FR処理,赤色LED照射による高R/FR処理,遠赤色LED照射による低R/FR処理,およびこれらの対照として透明農ビ,白色蛍光灯照射,無処理の7処理の試験を実施中である.試験では群落内の光質,茎数,主茎葉齢を毎週測定している他,2週間間隔で地上部をサンプリングし,葉面積と地上部乾物重の測定を実施している.栽培試験自体はおおむね順調であるが,光質の変化が生育に及ぼす影響については今のところ顕著な変化は確認できていない.試験は27年6月上旬に終了予定であり,今後詳細に解析を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
圃場での栽培試験による作物研究では,気候の影響や結果の再現性を確認するために,同じ試験を最低2回繰り返すことが求められる.このため,平成27年度は11月から平成26年度に実施した試験と同じ試験を実施する予定である.ただ,光質の変化が生育に及ぼす影響については,今のところ顕著な変化は確認できていないので,光質処理を行う時期や1日の中の時間,あるいは光質処理に対する品種間差を確認する試験について検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品として予定していた備品のうち,播種機は予定していた製品の播種精度が十分でなかったことから,手押し式播種機とシーダーテープの併用で代用する事とし,購入を中止した.6箇所の定点測定を想定して6個の購入を予定していた単波長センサーは,1台の単波長センサーと光量子センサおよびデータロガーとの組み合わせによる機動性の高い光質測定システムに変更した.キャンベル社のデータロガーについては機種選定が遅れ,次年度購入を予定している.一方,圃場に設置する全天候型の光質処理装置には,防水型のハウジングが適していることわかり,これの単価および数が予定よりも増加した.以上の理由により次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
日射量および光質測定関係機器およびデータロガー機器の購入と光質制御関連資材の拡充を中心に使用を計画している.
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