研究課題/領域番号 |
26450022
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
豊田 正範 香川大学, 農学部, 教授 (30284350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光質 / コムギ / 群落内光環境 / R:FR / 物質生産 |
研究実績の概要 |
26年と27年の11月~6月に2回の圃場試験を実施した.条間25cm,株間3cmで条播したコムギ品種“さぬきの夢2009”に対し,光質処理として,遠赤外線域を吸収する光質コントロールフィルムおよび透明農業用ポリフィルムを畝の中央1条を挟むように屏風状に設置した.さらに,植物育成用660nm 赤色LED(長さ1m,4本連続設置),730nmの遠赤色LED(長さ1m×1本設置)および植物育成用白色蛍光灯(長さ1m×1本設置)を地上10cmの高さに設置し中央1条に対して水平に照射した.毎週,660nmと730nmの光量子量を同時に測定するセンサーを用いて群落内地上部のR: FRを測定した.温度の影響を評価するため,各処理区の地上10cmの高さの気温を熱電対で記録した.分げつ数,葉齢,草高を毎週,地上部乾物重と葉面積指数(LAI)を隔週,成熟期に収量および収量構成要素を調査した.本試験の結果,高R/FR比条件(遠赤外線吸収フィルムおよび赤色LED)は開花期を遅らせたが,個体あたりの茎数についてはいずれの処理も有意な効果はなかった.なお,収量および収量構成要素では穂数および一穂粒数は赤色LEDで高かったが,遠赤外線吸収フィルムが最も低かったことから,高R/FR比処理による収量への影響に一定の傾向はみられなかった. 圃場試験では以上のように光質処理による明確な影響はみられなかった.しかし,27年11月から圃場試験と並行して実施したポット試験において,高および低R/FR処理がコムギ分げつ性に及ぼす影響の品種間差を国内47品種を用いて調査したところ,光質に対する分げつ性の反応に明瞭な品種間差が認められた.光質に対する分げつ性反応の品種間差については再現性を確認し,さらに詳細を解明するため, 28年11月から前年同様のポット試験を実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圃場条件下で光質を変化させる実験システムと群落内の光質を迅速に多点測定する手法は計画どおり確立した.計画どおり2回の圃場試験を実施したが,いずれの圃場試験でも分げつ性に明確な反応はみられなかった.しかし,47品種を用いたポット試験(平成27年11月~平成28年6月)では光質に対する分げつ性の反応に明瞭な品種間差が認められた.現在,同じポット試験を28年11月から再試験している最中である.具体的なデータの解析はこれからであるが,現在までのところ,昨年度と類似した品種反応が得られている. なお,本研究はコムギにおける分げつ性と光質との関係を明らかにすることを目的としているが,同じく圃場栽培したダイズの腋芽の発生・発育と光質との関係についても並行して試験を実施した.分枝特性の異なるダイズ2品種の群落内R:FR比の経時変化と群落内垂直方向におけるR:FR比との関係を調査した結果,ダイズの分枝特性の品種間差あるいは栽植密度間差とR:FR比の変化と関係には特定の因果関係は見られなかったという結果が得られ,論文で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
圃場条件下で光質を変化させる実験システムと群落内の光質を迅速に多点測定する手法は計画どおり確立した.計画どおり2回の圃場試験を実施したが,いずれの試験でも分げつ性に明確な反応はみられなかった.しかし,47品種を用いたポット試験では光質に対する分げつ性の反応に明瞭な品種間差が認められた.このため 28年11月からポット試験を再試験している.本研究の補助事業期間の延長は主にポット試験の実施と結果の解析のためである.今年度は2カ年の圃場試験およびポット試験の結果を解析して,論文として公表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた圃場実験では明瞭な結果が得られなかったが,平成27年11月から圃場試験と並行して実施した追加のポット試験では光質に対する分げつ反応に品種間差が認められたため,平成28年11月から追加でポット実験を追試している.この追試結果の解析も含めて論文をまとめるため,ポット試験に必要な消耗品,英語論文校閲料および論文投稿料,学会での成果発表のための旅費を使用していない.
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文校閲料,論文投稿料,学会参加旅費および消耗品等で執行予定である.
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