圃場条件下において光質を変化させる実験システムと群落内の光質を迅速に多点測定する手法は計画どおり確立した.この手法を用いて27年度にダイズの分枝特性と群落内R/FR比を調査し,論文を発表した. コムギでは計画どおり26年と27年の11月~6月に2回の圃場試験を実施し,赤色光および遠赤色光を発するLEDを用いた高および低F:FR環境がコムギの分げつ性に及ぼす影響を調査したが,いずれの試験でも処理による明確な影響はみられなかった.しかし,27年11月から圃場試験と並行して実施したポット試験において,高および低R:FR処理がコムギ分げつ性に及ぼす影響の品種間差を国内47品種を用いて調査したところ,光質に対する分げつ性の反応に明瞭な品種間差が認められた.光質に対する分げつ性反応の品種間差については再現性を確認し,さらに詳細を解明するため, 28年11月から前年同様のポット試験を実施した.全品種こみにした処理区間の平均値の比較では,27年の試験と同様,高R:FR処理区では分げつ数の増加と草高の低下,低R:FR処理区では分げつ数の減少と草高の増加という明確な処理間差が認められた.光質変化に対する個々の品種の反応では,それぞれの光処理区において分げつ数や草高が比較的大きく変化した品種が存在したが,これらの品種は平成27年播種の試験で反応した品種とは一致せず,両年とも同じように光質処理に対して反応する品種は見出されなかった.また,光質に対する分げつ性および草高の反応について全品種の両年の相関関係を調査したが,有意な年次相関は得られなかった. 以上のように光質変化に対する分げつ性反応の処理間差は明確であるが,光質変化に特異的に反応する品種は本研究期間では特定できなかった.その原因として品種の遺伝的変異の狭さが想定されたので,現在,NIASコアコレクションを用いて同じ試験を継続している.
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