研究課題/領域番号 |
26450025
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
関 昌子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター作物開発研究領域, 上級研究員 (50414636)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オオムギ / 幼穂形成 / 早晩性 / 耐雪性 / 非構造性炭水化物 / 低温要求性 / 日長反応性 |
研究実績の概要 |
1.早晩性の異なるオオムギ品種の積雪前および消雪後の形態とNSC蓄積量、雪害程度調査:26年度と同じくポット試験を2播種期で実施するとともに、標高の高い圃場においても調査を行った結果、いずれの栽培条件においても積雪前および消雪後の非構造性炭水化物(NSC)蓄積と雪害程度に関係があることが確認された。また、各試験において形態の調査を行ったところ、26年度にNSC含有率との関係が認められた幼穂長、幼穂分化程度、小穂原基数の品種間差異は、互いに関係するものの異なる制御機構の影響を受けている可能性が示された。 2.低温要求性程度、日長反応性程度の評価:低温要求性程度について2か年にわたり評価を行った結果、低温要求性を満たす低温処理期間は、7日以下の非低温要求型の春播種型品種をのぞき、春播型、秋播型品種とも30-50日の間であまり差がなく、春播型と秋播型で明確に区別されたコムギと傾向が異なることが明らかとなった。また、純粋早晩性の指標となる低温要求性程度評価試験における止葉展開までの最短日数と圃場出穂期は高い相関関係にあったが、寒冷地品種に限ると逆転する現象がみられた。日長反応性程度について評価を行ったところ、寒冷地品種の早晩性は日長反応性程度によるものと推察される結果が得られた。26年度に行った4つの日長反応性遺伝子の遺伝子型の調査では寒冷地品種内に変異がなく、本研究で示された日長反応性程度の差異は、未知の因子による可能性が示唆された。 3.低温要求性程度および日長反応性程度とNSC蓄積性の関連性についての検討:各栽培条件におけるNSC含有率と低温要求性程度、日長反応性程度および26年度解析を行った遺伝子型との関係について現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温要求性程度と日長反応性程度について、これまでの概念や予想と異なる結果となり、新たな知見を得ることができた。NSCのデータは順調に得られており、今後、低温要求性程度、日長反応性程度による形態変異との関係について解析をすすめる予定で、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.早晩性の異なる寒冷地オオムギ品種の積雪前から積雪下および消雪後の形態とNSC蓄積量、雪害程度調査:昨年度までに結果を得た積雪前および消雪後に加えて、積雪中の形態およびNSC蓄積の動向について寒冷地品種5品種を用いて調査を行う。 2.低温要求性程度および日長反応性程度とNSC蓄積性の関連性についての検討:27年度行った日長反応性程度評価について追試を行うとともに、低温要求性程度および日長反応性程度が形態変異ならびにNSC蓄積性におよぼす影響について検討する。 3.積雪前および消雪後の窒素含量と雪害程度との関係調査:窒素含量についてはNSCにくらべて雪害程度に対する効果が小さいと想定して、当初測定を計画していなかったが、このことを確認するため、これまで得たサンプルについて窒素含量測定を行う。 以上より、低温要求性程度および日長反応性程度によるオオムギの形態変異とNSC蓄積性および耐雪性との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の477,966円は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。調査補助の人件費については作業手順や方法の改善で効率化がはかられ所要時間短縮により安価となり、研究資材、農業資材の一部は前年度購入の残りを利用した。
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次年度使用額の使用計画 |
目的であるNSCの効果を裏付けるため当初計画していなかった窒素含量測定を実施するための消耗品購入と人件費、追加の確認試験を行う日長反応性評価の資材購入に使用予定であり、研究計画の遂行およびとりまとめのために使用する。
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