最終年度では、1.早晩性の異なる寒冷地オオムギ4品種の積雪前から積雪下および消雪後の形態と非構造性炭水化物(NSC)含量を調査し、積雪下での幼穂長、小穂原基数の増加や幼穂分化程度の進展に伴いNSC含有率の低下する現象が観察された。2.低温要求性程度および日長反応性程度とNSC蓄積性の関連性について、低温要求性程度と日長反応性程度がともに小さい品種、特に日長反応性遺伝子を早生型で2個以上もった品種は積雪前のNSCの蓄積が顕著に少なくなることが明らかとなった。3.積雪前および消雪後の茎葉の窒素含量と雪害程度とは関係しないことが確認された。 研究期間を通して、1.オオムギの積雪前および消雪後の茎葉のNSC含有率が高いほど雪害程度が低くなること、2.NSC含有率は早晩性、とくに幼穂長、幼穂分化程度、小穂原基数などの幼穂の生育と明瞭な関係があり、生育が早いほどNSC含有率が低くなること、この現象が積雪下でも確認されること、3.低温要求性遺伝子春播型1個と日長反応性遺伝子早生型2個以上の組合せでNSCの蓄積が顕著に少なくなること、が示され、 幼穂形成早晩が耐雪性品種間差異の一因であることが明らかとなった。 一方で低温要求性遺伝子と日長反応性遺伝子の組合せが異なる早晩性が同程度に中庸の品種どうしで、NSCの蓄積性が異なることが示された。このことには、低温要求性程度や日長反応性程度の違いのほか、NSCの主成分であるフルクタンの合成・代謝遺伝子の変異が関係している可能性が考えられる。今後フルクタン合成遺伝子の変異解析を予定している研究者に協力し、オオムギの耐雪性研究を発展させる。また、本研究において、寒冷地品種間における日長反応性程度の差異は未知因子によることが示唆され、新たな日長反応性遺伝子を同定するための研究を別途開始している。
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