本課題では全研究期間を通じて以下の成果を得ることができた。 平成26年度は、イネ科牧草イタリアンライグラスにおいて、第4連鎖群に座乗すると思われるカマイラズ(セルロース合成変異)遺伝子座周辺の遺伝地図を構築するため、正常系統と変異系統のF1を変異系統に戻し交配して得たBC1F1集団を用いて、ライグラスの第4連鎖群を構成することが報告されているSSRマーカーによる多型解析を行い、カマイラズ形質遺伝子座周辺の遺伝地図を構築した。 平成27年度は、平成26年度に構築した第4連鎖群の遺伝地図を高密度化するため、ライグラス第4連鎖群のSSRマーカーおよび同連鎖群とシンテニーの関係にあるイネ第3染色体に関連するDNAマーカーの多型解析を、前述のBC1F1解析集団を用いて行い、正常系統の優性マーカー41個から成る連鎖地図、変異系統の優性マーカー33個から成る連鎖地図、およびこれら優性マーカーに両親でホモあるいはヘテロの遺伝子型が示されたマーカーを加えて統合した114マーカーから成る連鎖地図を構築した。 平成28年度は、カマイラズ形質遺伝子座LmBC1周辺に位置づけられたイネ遺伝子由来DNAマーカーの配置と、イネゲノム上での配置との共線性を確認するとともに、細胞壁合成関連遺伝子群、およびそれら遺伝子群と共発現する遺伝子群を、イネのデータべースを用いて検索した。その結果、ライグラスのLmBC1遺伝子座周辺におけるイネ遺伝子由来DNAマーカーの遺伝学的配置が、シンテニーの関係にあるイネ第3染色体上の物理的配置と非常によく符号すること、およびライグラスLmBC1遺伝子座に相当するイネゲノム上にもイネカマイラズ遺伝子BC1が存在することが明らかとなった。これらの成果から、ライグラスのLmBC1遺伝子がイネカマイラズ遺伝子BC1のオーソログである可能性を強く示唆す結果を得るに至った。
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