3年目(最終年度)は、2年目と同様に、1年目に改良した小型オープントップチャンバーを用いて、水稲品種に対するオゾン(O3)と二酸化炭素(CO2)の単独および複合影響評価実験を実施した。水稲4品種(コシヒカリ、キヌヒカリ、彩のかがやき、彩のきずな)を用いて、O3濃度3段階[O3除去区、野外O3濃度区、野外O3濃度+30ppb区(高濃度O3区)]と、CO2濃度2段階[野外CO2区、野外CO2+150ppm区(高濃度CO2区)]を設け、其々のガス処理条件を掛け合わせた6処理区を設け、5月下旬~10月上旬において育成し、収量などを計測した。 その結果、各処理条件で育成した4品種のいずれにおいても、CO2添加による約1割程度の収量増加傾向が認められた。一方、O3による有意な収量低下もすべての品種で認められた。収量に対するCO2とO3の複合影響は認められず、両影響が相加的に影響していると考えられた。 2年目と3年目の曝露実験結果を用いて、各年のO3除去区の収量を100%とした時の相対収量と育成期間中の昼間7時間40ppb以上の積算O3ドースであるAOT40との関係を各品種において検討した。その結果、すべての品種でO3により収量は低下し、現状レベルのO3で8~14%程度の低下、現状レベル+30ppbで12~22%程度の低下が認められた。一方、150ppmのCO2濃度上昇によって収量は、8%~15%程度増加していた。また、それぞれの影響に品種間差が認められたため、収量構成要素について検討したが、応答が1年目と2年目で異なるなど明瞭な品種間差異の要因を突き止めることはできなかった。また、4品種とも高濃度CO2(+150ppm)環境下におけるO3による収量低下程度は現状レベルのCO2でのO3影響とほぼ同様で、150ppmのCO2濃度上昇かではO3感受性はあまり変化しないのではないかと考えられた。
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