日本における高齢化は年々進んでおり、65歳以上の高齢化率は24.1%、さらに一人暮らし高齢者の割合が20%を超え、地域における高齢者の孤立が大きな問題となっている(内閣府[2013])。このような地域の高齢者の健康状態をチェックし、支援するのは地域看護分野の専門であるが、現在、地域における保健師の不足や超過勤務などによる活動の限界が危惧されている((社)日本看護協会[2010])。また、医療制度が改正され、入院治療から自宅や地域での療養型に移行していることからも、今後、一人暮らしの高齢者を地域全体でケアしていく必要がある。このような現状から、今後は地域の高齢者の健康をサポートする役割(地域高齢者ケア)が看護分野以外の専門領域でも必要になると考えられる。一方、園芸療法の効果については多くの既往研究が見られるが、高齢者施設やコミュニティ、集団における効果に関する研究が多く、孤立した高齢者に対する研究結果はほとんど見られない。 そこで本研究では、「訪問看護」と植物を用いたケアである「園芸療法」を組み合わせた新しい高齢者の健康管理システム『訪問園芸』を提案し、その有効性を検証することとした。 その結果、農学系学生が「訪問園芸」活動として高齢者宅の庭管理活動を行ったところ、植物を媒介にして学生と高齢者のコミュニケーションが促進され、双方共に共感を得られやすくなった。よって、農学系学生による「訪問園芸」活動は在宅高齢者のQOL向上に貢献できる活動の一つであり、今後の地域高齢者ケアの一つの方向性であると考えられた。
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