シンビジウム‘サザナミチャンピオン’を20/15℃または30/25℃で栽培し、着色程度とアントシアニン生合成遺伝子の発現を調査した。高温条件で栽培したとき、花被片ではアントシアニン着色が減少し、一方唇弁では斑点模様が大きくなることが確認された。アントシアニンの蓄積量は花被片で30/25℃処理によって40%まで減少していたが、フラボノール含量は差が無かった。多くのアントシアン生合成に関わる遺伝子は、高温処理により著しく減少していた。一方、フラボン生合成に関与する遺伝子の発現は、栽培温度による影響をほとんど受けなかった。アントシアニン生合成の調節因子遺伝子であるMYB1は、アントシアニン生合成遺伝子の発現様式と類似していた。このことから、転写調節因子であるMYB1の発現量が、温度による着色程度を制御していることが明らかになった。また、フラボノイド3'-水酸化酵素(F3'H)は、高温時に唇弁で発現が上昇し、また唇弁着色品種において特異的に発現していることが明らかになった。F3'Hの発現の有無が、唇弁のアントシアニン着色の鍵となっていることを明らかにした。 リンドウの白寿は、青と白のストライプ模様を有する品種である。アントシアニン生合成遺伝子の発現解析の結果、カルコン合成酵素(CHS)遺伝子の発現が、白色部の裂片で減少していることが明らかになった。また、CHS siRNAも検出され、転写後サイレンシングで花模様が形成されていることが示唆された。 これらの結果から、花模様形成は植物種によって異なるメカニズムで形成されていることが明らかになった。
|