研究課題/領域番号 |
26450034
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田村 文男 鳥取大学, 農学部, 教授 (50217197)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 自発休眠 / QTL解析 / 遺伝 / ニホンナシ |
研究実績の概要 |
自家和合性・休眠導入性ナシ個体TH3と休眠導入性個体のタイワンナシ横山、並びにそれらのF1およびF2個体群の落葉日、展葉期、どん葉および花器の形態特性並びに自発休眠特性について調査した。休眠の深さを調査した結果から、F1 62系統のうち自発休眠導入性個体が59個体,非導入性が3個体であった.また,F2 33系統については自発休眠導入性個体が24個体,非導入性個体が9個体であった.そこで,TH3が自発休眠導入に関与する優性遺伝子をホモでもつと仮定しχ2検定を行ったところ,F1およびF2系統群において期待値に合致する結果となり,自発休眠導入特性が1遺伝子により支配されていることが示唆された.また,自発休眠導入特性と形態的および形質的特性についての相関関係はみられなかった. F1,F2を用い、バルク法により休眠導入性の有無のマーカー作成を行おうとしたが、特定できる多型は得られなかった。そこで、1月上旬に『他発休眠期』にあった横山並びに、『自発休眠最深期』であったTH3の花芽についてRNA-seq解析を行った.一次解析後,二次解析でこれらをアセンブリングし,類似したコンティグをクラスタリングし,CD-HITでは309,817,TGICLでは44,857の配列が得られた.また,それぞれのクラスタリングデータについて発現量の比較解析を行い,P値の補正を行うことでCD-HIT,TGICLともに正規化および非正規化の2条件間で共通する12遺伝子が確認された.さらに,両クラスタリングデータ間の正規化条件で共通する7遺伝子,非正規化条件で共通する9遺伝子が確認され,全ての条件間で共通する6遺伝子を自発休眠の推移に関与する候補遺伝子として選抜した.今回、確認されたDehydrinやDefensinは同じ低温積算量を蓄積している両個体間の芽で異なる発現量を示すと推察された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は予備的にサブトラクション法等により、次年度から予定していた本格的な休眠中および休眠打破後における網羅的遺伝子発現解析実験のための知見を集積する予定であったが、26年度末までに網羅的遺伝子発現解析の一部を終了することが出来た。一方、現象面においても27年度末に到達することを予定していたF2の低温要求量の評価を26年度末に達成し、合わせて自発休眠導入性が1遺伝子により支配されていることを明確にすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は計画以上に進展しており、すでに一部は雑誌に掲載され、学会等に報告している。今後は、F2個体のなかで極めて要求量の少ないものと多いものを用いて研究を進め発現解析を行うとともに、得られた情報を基に、休眠導入並びに低温要求量のマーカーを決定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験に用いる一部の試薬の納入が期間内にできなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
継続して行う次年度の実験に必要であるため直ちに購入する。
|