研究実績の概要 |
少低温要求性モモの萌芽に影響する低温遭遇量と生育温度との関係を明らかにするとともに、萌芽後の生育への温度の影響を明らかにするために、樹を低温遭遇時間が240,570,850時間に達したときに、それぞれ10,15,20,25℃の人工気象室に搬入し、その後の生育を調査した。全ての温度処理区において,低温遭遇量が大きいほど、また処理温度が高いほど、萌芽や開花が早まるとともに発芽率が高くなった。果実成熟日数は,温度が高いほど短くなったが、低温遭遇量による差はほとんどみられなかった。果実品質は、温度が高いほど優れる傾向にあった。燃料費節減を目的とした少低温要求性モモ樹の無加温被覆栽培も試みた。無加温でも日中のハウス内温度はかなり上昇し、萌芽や開花はかなり促進され、収穫は露地と比較して1ヶ月ほど早くなった。ただ、低温遭遇時間による収穫時期への大きな影響は認められなかった。無加温でも霜害はみられなかった。果実品質は被覆栽培で露地栽培よりも優れていた。これらのことから、少低温要求性モモの無加温被覆栽培の有用性が示された。一方、休眠導入時から萌芽期にかけて、切り枝を経時的に採取して恒温器で発芽試験を行い、自発休眠深度を確認した。同時に花芽を採取して、休眠に関わるDAM遺伝子の発現量の変化をリアルタイムPCRで調べた。自発休眠覚醒と同時にDAM遺伝子の発現量が激減しており、DAM遺伝子を調べることで少低温要求性モモの自発休眠覚醒の有無を確認できる可能性が示された。
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