本研究では,温暖化に適応可能な我が国独自のキウイフルーツ品種の育成に向け、シマサルナシとキウイフルーツ種間雑種選抜系統の生態特性を明らかにした。 最終年度においては、シマサルナシとキウイフルーツの種間雑種品種の耐暑性、耐乾性、耐湿性を比較した。43℃前後の高温条件下での比較で、シマサルナシ、シマサルナシとチネンシス種キウイフルーツ種間雑種品種は、チネンシス種やデリシオサ種キウイフルーツ品種と比較して、葉やけの発生が抑えられ、光合成速度も維持された。灌水停止後、チネンシス種とデリシオサ種キウイフルーツでは、3~4日後に葉やけが生じ、光合成はほぼ停止した。シマサルナシと種間雑種でも4日目以降、葉やけが生じ、葉やけが増加した。土壌水分含量がキウイフルーツでは約10%、シマサルナシで約5%、種間雑種で6~9%以下で発生した。湛水状態では、キウイフルーツでは7日目で葉やけが多発し、光合成が停止した。シマサルナシおよび種間雑種では9日目以降、葉の障害が発生したが、光合成速度は低い状態で維持された。 研究期間を通じて、シマサルナシとキウイフルーツとの種間雑種品種は、シマサルナシに由来する少低温要求性および早期萌芽特性を有しており、圃場条件における夏季の高温遭遇による葉やけ発生が、チネンシス種キウイフルーツと比べ、極めて少ないことが示された。種間雑種と両親の個葉の光合成蒸散特性を調査したところ、種間雑種は、高温条件、乾燥条件、過湿条件のいずれにおいても、比較的高い光合成速度を保つことが示された。種間雑種の培養系での不定芽分化と個体再生はできたが、染色体倍加には至らなかった。 以上の結果から、シマサルナシとキウイフルーツとの交雑品種が、シマサルナシに由来する耐暑性、耐乾性、耐湿性等の環境適応性を備えていることが確認され、当該種間雑種品種の普及や今後の育種計画に活用できることが明らかとなった。
|