研究課題/領域番号 |
26450037
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
西村 安代 高知大学, 自然科学系, 准教授 (20435134)
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研究分担者 |
森 牧人 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60325496)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 施設栽培 / 赤外線透過抑制 / 高温障害 / 昇温抑制 / 機能性フィルム / 熱線反射フィルム |
研究実績の概要 |
施設野菜は周年供給が求められ、高温期でのハウス栽培も余儀なくされてきている。一方で、地球温暖化や異常気象により春季~初夏でも高温になることも多く、将来的に上昇することが予想され、ハウス栽培は高温対策も必要不可欠となっている。そこで、ハウス内昇温抑制のために超波長域の熱線(赤外線)の透過量を反射させて減少する機能を持つ長期展張型の機能性光学フィルムの利用を考えた。しかし、赤外線透過量の多少によりハウス内環境や栽培作物への影響が詳細には解明されておらず、基礎的な研究の積み重ねが求められる。そこでH26年度においては、熱線反射フィルムハウスと熱線を遮断していないハウス(対照区)において5月~8月初旬はナス栽培、11月下旬~翌年度4月末はイチゴ栽培を行い、栽培環境への影響を比較測定するとともに、収量、品質、生育調査を行った。 1.栽培試験:ハウス内気温は、熱線反射区が対照区よりもやや低く、また、日射量と地温は熱線反射区で有意に低くなった。 ナス栽培について‘くろわし’、‘長岡長’の全収量は、対照区で高く、‘竜馬’では熱線反射区で有意に高く品種により差異がみられた。果皮色について、熱線反射区の‘竜馬’、‘長岡長’では対照区よりも赤みが増した。イチゴの収量は初期において収量が熱線反射区で低下したが、気温の上昇とともに逆転し、1果実の重さも重くなった。 2. 高温障害の現状調査:高知県における高温の影響については、台風11号が上陸し、また、8月の雨降らなかった日は1日だけと、多雨、寡照となった。気象庁の発表では、西日本太平洋側の8月の日照時間平年比は54%、降水量の平年比は301%と両者ともに1946年の統計開始以来の記録となった。そのため、農作物は、台風被害ならびに日照不足により、生育不良などの影響が大きくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台風11号が高知県に上陸し、多大な被害をもたらし、高知大学内の試験ハウスの熱線反射フィルムが破れるなどの被害を受け、ナスの栽培実験が中断した。しかし、5~7月の栽培はしており、平年並みもしくは平年以上の気温となっていたので、栽培試験のある程度の結果は得られた。当初10月から行う予定だったイチゴ栽培試験は、試験フィルムの準備が間に合わず、遅れたが、昨年度取得したデータと共に解析を行えば、十分な結果が得られたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1.ハウス内栽培環境測定:引き続き各ハウス内の環境測定を行う。また、高温期において自然光型フィルムハウスでは遮光資材を導入し、熱線透過抑制フィルム展張ハウスとの昇温抑制効果を比較する。さらにH27年度においては低温期に加温機を稼働させて併用での栽培環境効果を検討する。低温期における熱線透過抑制フィルムと加温機の併用は、ハウス外に熱が逃げにくく保温効果が高いという報告もあり、これについて実証試験を行う。 2.栽培作物への影響と既存の昇温防止技術との併用効果ならび冬季低温期対策:H27 年度は高温期において自然光型フィルムハウスでは遮光資材を使用し、熱線透過抑制フィルム展張ハウスとともにスイカ栽培試験を行う。スイカは高温になると果肉品質や糖度の低下などの影響を受ける一方で、光飽和点が高い植物であるため、光環境への影響を調査する。H27年度の初冬よりH28年度にかけて、ナスを各ハウスに加温機を導入して栽培し、低温期~高温期のナスの生育・収量・品質に及ぼす影響を調査する。ナスは高知県における重要作物の一つであり、促成栽培されている。熱線透過抑制フィルムのナス栽培への導入を想定して、栽培試験を行う。H28年度の高温期においてはH26、27年度の結果を元に、熱線遮断フィルムのより効果的な利用方法について検討を行う。
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