本研究は、トルコギキョウの花冠形質を含む花色遺伝の実態をほぼ完全に明らかにした。本研究成果は以下の通りである。 1. 3種の主要花弁色素のペラルゴニジン(Pg)、シアニジン(Cy)、デルフィニジン(Dp)に係る生合成遺伝子F3’5’Hの多型について解析し、EgHf 1系統はPg、Cy、Dpを蓄積する複対立遺伝子HO型に、EgHf 2系統はDpを蓄積するHD型に、EgHf 3系統はDpを蓄積しないHT型またはHF型に対応すること、また、アントシアニン生合成遺伝子(ANS)が、優性および劣性の単一遺伝子Ans/ansにより独立して制御されていることを明らかにした。 2. 野生種はDp蓄積型の色素表現型でありEgHf 1の多型遺伝子を有することを見出し、5つ目の新たな複対立遺伝子HE型を想定し、HEHEの対立遺伝子型はDp単独の色素表現型の淡い紫色の表現型であることを明らかにした。 3. 花冠形質の遺伝様式について、かすり花は優性および劣性の単一遺伝子B/b、覆輪花は単一遺伝子E/eにより制御されること、黄色花について、カロテノイド(CD)生合成に関係する単一遺伝子Y/yと、CDを分解する単一遺伝子C/cの、2種類の優性および劣性の遺伝子型により制御されることを見出した。 4. 花形について、複対立する遺伝子型DD(八重咲き形質の遺伝子型)、DS(一重咲き形質の遺伝子型)、DW(野生種由来の一重咲き形質の遺伝子型)により制御され、DDDW型のヘテロ型が二重咲き形質を発現することを見出し、本対立遺伝子DWは野生種に起源すると推定した。 5. 遺伝子型DXDX・B/b・E/e・HXHX・Ans/ans・Pg/pg・Y/y・C/cを用いて種々のF1系統を作出した結果、花形、花色、かすり花等に関する表現型と遺伝子型が遜色なく一致し、目標とするトルコギキョウF1品種を作出できることを実証した。
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