研究課題
本研究は,葉腋内の本来側枝になる腋芽が,ヤマノイモ特有の器官である「むかご」へと発育する特異な現象を細胞化学的および生理化学的観点から解析することを目的とする.初年目である今年度は,垂下処理後のむかご(坦根体)の発育に影響する枝葉(坦根体)の発育量と新芋の発育の関係を検討した結果,枝葉と葉数および葉重との回帰式では高い決定係数を示したが,枝葉と新芋重との回帰式では,低い決定係数であり,新芋の発育に作用する要因は複数あることが示唆された.そのため,垂下処理後のむかごの大小を検討する場合,枝葉との関係をできるだけ排除し,簡易な条件で検討する必要があることが明らかになったので,次年度は検討する予定である.葉腋内の腋芽には主芽と副芽が形成され,むかごは副芽が組織形態的に変化したものである.この組織形態学的な変化を可視化するため,蛍光顕微鏡を活用して,チミジンの代わりにBrdUが取り込まれることを利用して,モノクローナル抗体と酵素または蛍光色素を結合した2次交代を用いると細胞分裂頻度を可視化することを検討した.この試験では,BrdUがむかごへの変化する直前の腋芽に安定して取り込まれる手法を明らかにする必要がある.そのため,腋芽までの取り込み時間を計測するため,葉腋が含む節部切片を色素液に生けて検討したが,葉への輸送は確認されるものの,葉腋への輸送が認められなかったため,今後も色素の種類を変更して再度葉腋への輸送の有無および速度を解明する必要がある.
3: やや遅れている
枝葉と新芋の関係が明らかになったものの,葉腋へ副芽がむかごへと組織形態学的に変化する過程を可視化できるところまで達成できていない.今年度は初年目でもあり今後の発展を期待して,この試験に比重を置いて取り組んだため,他の研究への取り組みを遅らせた.ただし,次年度は,この可視化には取り組むものの,他の研究にも予定通り進める予定である,そのため特段の問題なく,最終年度までには研究目的が達成できうるものと考えている.
今年度は,初年目ということを鑑み,腋芽からむかごへと組織形態学的な変化を可視化することを重点的に取り組んだが,十分に期待した成果が得られないものもあった.しかし,改善する手法もある程度検討しているため,明らかにできる可能性が高い.次年度は,それとともに,他の研究にも配慮して進める予定である.そのため,本研究の取り組みについては,特段の問題はないものと考えている.
当初予定していた,種芋購入や試薬などの消耗品を購入せずに対応できたものがあったため,少なかった.
2年目である平成27年度に,研究を加速度的に進展させるため,必要な消耗品の購入費として使用する計画である.
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