研究課題
トリプトファン(Trp)からインドールピルビン酸(IPyA)を経由してインドール酢酸(IAA)にいたる経路がオーキシンの主要生合成経路である。今年度は長野県産グラジオラス‘紅園’および‘エッセンシャル’、茨城県産グラジオラス‘グリーンアイル’の小花を用いて、TrpからIPyAへの変換を阻害するTrpアミノ基転移酵素阻害剤としてキヌレニン(Kyn)およびKOK2052bp、IPyAからIAAへの変換を阻害するYUUCA阻害剤としてベンゾチアゾールチオフェンボロン酸(BTBo)、パラフェニルボロン酸(PPBo)、ビフェニルボロン酸(BBo)を用いて鮮度保持効果、IAA生合成関連物質の内生量変動などについて検討を行った。その結果、‘エッセンシャル’においては、BTBo(1μM)処理による開花遅延および花持ち効果が認められ、Kyn(10μM)、BTBo(1μM)、BBo(1μM)において開花遅延効果が認められた。しかし、いずれにおいてもその効果はMock処理と比較して1~2日程度であった。‘グリーンアイル’小花ではIAAの内生量はBBo(100nM)処理、Mock処理ともに経時的に減少していたが、処理1時間後よりMock処理と比較してBBo(100nM)処理の内生IAA量の低下が見られ、処理24時間後のIAA内生量はMock処理の半分以下であった。このときIPyA内生量はBBo処理24、72時間後にMock処理よりも増加しており、BBoがIPyAからIAAへの変換を阻害していることが明らかとなった。このとき小花の新鮮重はいずれの処理においても経時的に増加していたが、72時間後ではMock処理よりもBBo処理の新鮮重が増加していた。これらの結果から、オーキシン生合成阻害剤処理によるIAA内生量の低下と、小花の生育肥大および鮮度に相関があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
実験に供試するグラジオラスについて、小売店を通じて市場より購入することにより、発蕾ステージが揃った実験材料の準備が容易となり、事前計画に沿った実験が可能となった。また、グラジオラスの蕾や小花のサンプルをそのまま凍結破砕可能な大きさのサンプルチューブ(22mL)と、マルチビーズショッカー専用のアルミカセット、アルミカセットホルダーを導入した事により、阻害剤処理したグラジオラス小花のサンプリングが容易となった。これらの事から、計画していた実験がスムーズに行えるようになり、研究が進捗した。
オーキシン生合成阻害剤処理したグラジオラス小花のエチレン生成量については既に分析を開始しており、オーキシン生合成阻害剤による、開花遅延・老化抑制効果とオーキシン生合成の阻害を経由したエチレン生産制御の関係を明らかとする。また、阻害剤処理とIAAの同時処理した回復実験の解析も行うことで、オーキシン生合成の阻害による開花遅延・老化抑制効果のメカニズムの詳細を明らかとする。
購入物品のカタログ価格と比較して納入価格が低かったため。
実験に必要な物品購入、謝金等に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Plant Journal
巻: 84 ページ: 827-837
10.1111/tpj.13032
Plant Cell Reports
巻: 34 ページ: 1343-1352
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