研究課題/領域番号 |
26450049
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研究機関 | 富山県農林水産総合技術センター |
研究代表者 |
荘司 和明 富山県農林水産総合技術センター, その他部局等, 研究員 (50504461)
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研究分担者 |
山本 将之 富山大学, その他の研究科, 講師 (10456402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シスエレメント / プロモーター / 形質転換体 / チューリップ / ユリ |
研究実績の概要 |
(1)シスエレメント配列の解析: これまでの解析によりチューリップMYBプロモーター領域(1.2 kb)およびユリMYBプロモーター領域(2.8kb)の中でシスエレメントが存在すると推定された領域は各々200 bpと150 bpである。この結果を基にiPCR法により各シスエレメント領域の任意の部位に40 bp、20 bp、1bpの欠失変異を導入し、花弁細胞における青色化の有無により更なるシスエレメント領域の絞り込みを行った結果、チューリップではTCAT配列が、ユリではAAACTTT配列が各々のMYBプロモーターにおける花弁特異性に関わるモチーフである可能性が示唆された。 (2)プロモーター領域の定量化: ユリMYBプロモーターの活性を定量化するために(1)で明らかになったシスエレメント配列領域をルシフェラーゼ(Luc)遺伝子に繋いだベクターを構築し、花弁細胞に遺伝子導入を行いLuc活性を測定した。その結果、AAACTTTモチーフを1個、3個、6個とタンデムに連結するに従い活性の上昇が認められた。このことから、ユリ花弁での遺伝子発現を強く促す能力を有するのはAAACTTTモチーフであることが示唆された。現在、チューリップのTCATモチーフについても同様の定量解析を進めている。 (3)形質転換体の作出: チューリップの組織培養系を活用した形質転換法について、遺伝子導入効率の向上と形質転換体作出までの期間短縮技術の開発を検討している。遺伝子導入効率については、アグロバクテリウム法において感染時のエチレン発生を抑制したスーパーアグロバクテリウム法を検討した結果、従来法に比べ約1.3倍の遺伝子導入効率の向上が認められた。また、再分化したシュートにインドール酪酸(IBA)を添加することにより発根が誘導され、形成される次世代の小球根が従来法に比べ約2倍に肥大化することが判明した。さらに、培養によって得られる小球根の肥大化促進に酸化型グルタチオン(GSSG)の添加が有効であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)シスエレメント配列の解析: おおむね順調に進展している。当初の予定通り、iPCR法によりシスエレメントが存在する領域の絞り込みが進んでいる。チューリップおよびユリ共に新鮮な花を材料とするため、解析時期が限られるが、現在、チューリップではタンデムに並ぶ2ヶ所のTCAT配列が、ユリではAAACTTT配列が花弁特異性を示すシスエレメントであることが示されている。 (2)プロモーター領域の定量化: おおむね順調に進展している。(1)で明らかとなった配列をルシフェラーゼ遺伝子に繋ぎLuc活性を測定している。ユリで先行しているが、シスエレメント配列の増加に比例して活性の増加が認められており、(1)で得られた結果を強くサポートしている。また、チューリップでの解析も現在進行中である。 (3)形質転換体の作出: おおむね順調に進展している。出発材料として主に花茎組織を用いた遺伝子導入を行っている。従来はパーティクルガン法およびアグロバクテリウム法であったが、遺伝子導入効率を高めるためスーパーアグロバクテリウム法を検討した結果、約1.3倍導入効率を高めることに成功した。また、チューリップでは形質転換体を維持するためには小球根形成が必須であるが、インドール酪酸(IBA)を用いてシュートの発根誘導を行うことで、従来に比べ約2倍の大きさの小球根が得られることが判明した。さらに、小球根の誘導培地に1mMのGSSGを添加することで、得られる小球根の大きさが約20%増大することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)シスエレメント配列の解析: iPCR法により1塩基単位でのシス配列解析を行い、花弁特異性を示すモチーフがほぼ明らかになった。 (2)プロモーター領域の定量化: Luc活性を指標とした定量化を継続する。また、シスエレメントの塩基配列を人為的に改変し活性強化に繋げる。 (3)形質転換体の作出: スーパーアグロバクテリウム法による遺伝子導入、IBAによるシュートの発根誘導やGSSGによる小球根の肥大化促進等を行い効率的な形質転換系の開発を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、前年度に購入した試薬等が残っており、そちらを優先的に使用したため新規に購入した試薬等が予定より少なく済んだ。 特に、研究代表者側で201,442円、研究分担者側で341,425円の直接経費が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、直接経費1,200,000円と前年度未使用分542,867円を合わせた1,742,867円および間接経費360,000円の予算で研究を進める。特に、本年度はチューリップのMYBプロモーターにおけるTCATモチーフの定量的解析と、プロモーター活性を強化した遺伝子導入ベクターの構築、組換え体作出のため試薬等の購入に使用する。また、学会等での成果発表に努める予定である。
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