研究課題/領域番号 |
26450053
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西内 巧 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (20334790)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤かび病 / スタッキング / 病害抵抗性 / 植物病原糸状菌 / かび毒 / トリコテセン / ユビキチン |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナの赤かび病抵抗性植物のスタック系統の作出:赤かび病抵抗性に関わる代謝物を同定する過程で、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が植物の抵抗性誘導性に関与することを新たに見出した。また、NMNの生合成に関わるNMNAT遺伝子の過剰発現株が、赤かび病菌に対して、葉及び花で非常に強い抵抗性を示すことを明らかにした。新たに進展抵抗性に示すNMNAT過剰発現株を加えて、同じく抵抗性を示すubq6/6*変異体と侵入抵抗性を示すTHI2.4遺伝子の過剰発現株の間での2重スタック系統の作出を進めている。
かび毒低減化遺伝子の解析:赤かび病菌が産生するトリコテセン系かび毒を低減化の候補遺伝子として、かび毒の細胞外排出に関わるGST13遺伝子の高発現株を作製した。GST13過剰発現株は、トリコテセン系かび毒であるデオキシニバレノール(DON)に低感受性を示し、赤かび病菌接種時にはDON蓄積量が野生株に比べて顕著に低下することを明らかにした。また、還元型グルタチオン供給に関わるGR2遺伝子についても過剰発現株を作成中である。さらに、GST13過剰発現株と上記の抵抗性系統とのスタック系統を作成を進めている。
UBQ6/6*による赤かび病抵抗性の制御機構の解析:UBQ6/6*は、ユビキチンドメインを有するリボソームタンパク質であるが、これらの二重変異体が、非常に強い侵入抵抗性を示すことを明らかにした。また、うどんこ病菌等の侵入抵抗性に関わるPEN1(SYP121)タンパク質と相同性の高いSYP122と相互作用する可能性が報告され、実際にUBQ6*タンパク質がSYP122と相互作用することを酵母2ハイブリットにより確認した。さらに、赤かび病菌を接種した野生株とubq6/6*変異体からユビキチンタンパク質の濃縮に成功しており、現在、発現差のあるタンパク質を同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スタック系統の作出は遅れているものの赤かび病抵抗性に関わる、より有用な新規遺伝子を複数同定しており、これらの遺伝子を有効に活用することで、少数の遺伝子の発現を改変するだけで、本研究の目的である赤かび病による感染とかび毒蓄積の両方を顕著に低減化した植物の作出が可能になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
赤かび病菌に対して侵入抵抗性を示すTHI2.4過剰発現株、赤かび病菌に対して進展抵抗性を示すNMNAT過剰発現株、侵入抵抗性及び進展抵抗性を示すubq6/6*変異体の間での2重スタック系統の作出を進める。また、かび毒を低減化するGST13遺伝子の高発現株とubq6/6*変異体の間での2重スタック系統を作出し、赤かび病による感染とかび毒蓄積の両方を顕著に低減化した植物の作出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
抵抗性系統における表現型の解析が中心となり、 形質転換体間の交配を行う技術補佐員の雇用を次年度以降としたため
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、形質転換体間の交配を行う技術補佐員の雇用するため、 平成27年度は予定通り執行する。
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