研究課題
多くの抵抗性遺伝子は、nucleotide binding site-leucine rich repeat (NB-LRR)型のタンパク質をコードしており、細胞内型レセプターであることが明らかになった。動物のNB-LRR型タンパク質も免疫に関与する細胞内レセプターとして働くことが知られている。動物のNB-LRR型タンパク質Apaf-1では、活性化は各ドメインの分子内結合、リガンド認識後のNBドメインに結合したヌクレオチドの交換反応、分子間結合の3つの要素によって決定される。しかしながら、植物のNB-LRR型の抵抗性タンパク質の活性化と、各ドメインの分子内/間結合やNBドメインのヌクレオチドの状態との関連はほとんど解析されていない。さらに、全長の抵抗性タンパク質の立体構造解析の報告は1つもない。抵抗性タンパク質は、植物において最強の免疫応答を誘導する重要な細胞内免疫レセプターであるにも関わらず、全長の抵抗性タンパク質を精製することが困難なことから、シグナル伝達機構や活性化機構はほとんど明らかになっていない。申請者らは、イネいもち病菌の抵抗性タンパク質Pitのリガンド AvrPitと下流のシグナル分子 OsSpike1を同定している。本研究では、抵抗性タンパク質 Pitの精製系を確立し、生化学解析と立体構造解析を駆使して、Pitの活性化機構を明らかにする。さらに、得られた知見を利用して、Pitのリガンド AvrPit認識後の活性化から、下流分子OsSpike1活性化に至るメカニズムの全過程を明らかにすることを目的とする。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、抵抗性タンパク質Pit-1とその相互作用分子Pit-2の解析を通し、Pit-1, Pit-2による免疫制御機構を理解することを試みた。本研究で、生化学的な解析とYeast-two-Hybrid解析から、Pit-1がホモダイマーを形成すること、Pit-1とPit-2がヘテロダイマーを形成することを確認した。また、イネプロトプラストでの蛍光タンパク質で標識したPit-2の一過的発現、Agroinfirtration法を用いたN.benthamianaでの一過的発現Immunoblottingにより、Pit-2はPit-1と比較して細胞内での安定性が低い可能性が示唆された。更に、Pit-1はPit-2と共発現させることで検出されるタンパク質が増加し、Pit-2がPit-1の安定性に寄与することが示唆された。また、Pit-1によって誘導される細胞死における各種Pit-2変異体の効果を検討したところ、スイッチドメインと考えられているNB-ARCドメインのMHDモチーフに変異を加えたPit-2変異体が、特異的に活性型Pit-1による細胞死誘導を抑制することを見出した。以上の結果から、Pit-1とPit-2は細胞内でヘテロダイマーを形成し、互いにタンパク質の安定性や活性を調節してペア抵抗性タンパク質として働く可能性があると推測された。以上のように新規の知見が得られており、おおむね順調に進展している。
本研究では、生化学解析と立体構造解析を駆使して、現在まで不明である抵抗性タンパク質 Pitのリガンド認識後の活性化から、下流分子OsSpike1活性化までの全過程を明らかにすることを目的とする。具体的には、抵抗性タンパク質Pitの全長タンパク質の精製系を立ち上げて[研究計画 1]、Pitの不活性化型と活性化型のヌクレオチドの状態[研究計画 2]、分子内結合と分子間相互作用を明らかにする[研究計画 3].次に、抵抗性タンパク質がリガンドを認識した際に、不活性化状態から活性化状態にどのように遷移するかを明らかにする[研究計画 4]。立体構造解析では、1)抵抗性タンパク質Pitの立体構造、2)Pitのリガンドである AvrPitとPitの複合体の立体構造、3)OsRac1の活性化分子でありPitの下流のシグナル分子でもある OsSpike1と Pitの複合体の立体構造の順に明らかにする[研究計画 5]。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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