イネにおける新規免疫応答タンパク質として単離したMD2の機能解析を行った。Flagタグ付きMD2タンパク質を発現する形質転換イネ(平成26年度に作出)から得た培養細胞を用いて、キチンエリシター処理時にどのような発現変動がみられるかと調べたところ、処理後経時的に細胞外へ分泌されることがわかった。この分泌はタグがN末端に付加した場合には認められなかったことから、MD2タンパク質のN末端の配列には細胞外分泌に必須な配列が存在しているものと考えられた。また、タグを分子量の大きい蛍光タンパク質(GFP)にしたMD2タンパク質発現イネ培養細胞を用いて同様の実験を行ったところ、Flagタグに比べて明らかに分泌量が減少していたことから、タンパク質の大きさも分泌量に影響すると思われた。また、処理に用いたエリシターをキチン以外のものを用いた場合に、分泌量の大幅な減少や、まったく分泌しないといったことが確認された。これらのことから、MD2タンパク質はキチンに特異性の高く応答し、細胞外へ分泌すると考えられた。上記研究と同時進行でMD2タンパク質と相互作用するタンパク質の探索を行ったところ、いくつかのリン酸化酵素が単離されたので、これら相互作用の再現性を取るべく、免疫沈降と酵母ツーハイブリッド法を用いた実験を繰り返したが、結果が不安定で候補どまりのタンパク質がいくつか得られるにとどまっている状態である。ただし、両手法で相互作用が認められていることから、より穏やかな条件の相互作用確認実験を行うことで解決できるものと考えている。
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