研究課題/領域番号 |
26450057
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
伊藤 真一 山口大学, 農学部, 教授 (30243629)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タマネギ乾腐病 / Fusarium oxysporum / エフェクター |
研究実績の概要 |
タマネギ乾腐病菌Fusarium oxysporum f. sp. cepae(FOC)の4 Mbp染色体には、トマト萎ちょう病菌のエフェクターである遺伝子のホモログ(FocSIX3、FocSIX5、およびFocSIX7)が座乗している。FocSIX3遺伝子を破壊した菌株では、タマネギに対する病原性が低下する。本研究の目的は、FocSIX3タンパク質がFOCの病原性因子であることを検証し、その作用機構を解明することである。研究初年度である26年度は、タマネギ植物体内におけるFocSIX3タンパク質の分泌およびFOC菌体の増殖を把握する技術の確立をめざして研究を行い、以下の成果を得た。 1)抗FocSIX3タンパク質抗体を作製し、免疫ブロッティングによって、FocSIX3タンパク質の誘導条件を調べた。その結果、FocSIX3タンパク質(14 kDa)は窒素源飢餓によって誘導され、分泌後12 kDaサイズにプロセシングされることが明らかになった。また、FOCを接種したタマネギ苗の免疫ブロッティングを行った結果、乾腐病の主な病変組織である茎盤(短縮茎)において14 kDaおよび12 kDaのタンパク質が検出された。これらの結果から、 FOCはタマネギの茎盤組織においても2種類のサイズ(14 kDaおよび12 kDa)のFocSIX3タンパク質を分泌していることが示唆された。 2)FocSIX3に存在する特異的塩基配列に基づいて、FocSIX3配列を特異的に増幅するプライマーペア(P1)を設計し、リアルタイムqPCRによるFOC定量法を確立した。これにより、タマネギ植物体におけるFOCの増殖や動態をモニタリングできるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)抗FocSIX3タンパク質抗体を得たことによって、FocSIX3タンパク質の特異的検出が可能になった。抗FocSIX3タンパク質抗体は、今後予定している「FocSIX3タンパク質と相互作用する宿主タンパク質の回収と解析」において強力なツールになることが期待できる。 2)感染したFOCが茎盤においてFocSIX3タンパク質を分泌していることが明らかになったことにより、FocSIX3タンパク質がエフェクターとして作用する部位を絞ることができた。 3)FocSIX3タンパク質が感染組織において12 kDaにプロセシングされるということが示唆された。この結果は、FocSIX3タンパク質の作用機構を探るうえで重要な知見であり、今後の研究の方向性にも影響を与えるものである。 4)リアルタイムqPCRによって、タマネギ植物体におけるFOCの増殖をモニタリングする手法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)病原性試験 FocSIX3遺伝子破壊株、FocSIX3遺伝子相補株、および野生株を用いてタマネギに対する病原性試験を行う。病原性試験は、幼苗接種試験(短期試験)、ポット接種試験(長期栽培試験)、および球根接種試験(貯蔵病害試験)の3通りで実施する。これら一連の接種試験によって、SIX3ホモログがFOCの病原性遺伝子であることを明らかにする。 2)FocSIX3タンパク質と相互作用するタマネギ細胞標的タンパク質 抗FocSIX3タンパク質抗体を用いた免疫沈降法によって、FocSIX3タンパク質に結合する宿主タンパク質をタマネギ茎盤組織から回収する。LC/MS/MSによって回収したタンパク質の質量解析を行い、タマネギタンパク質を同定する。 3)FocSIX3タンパク質のプロセシング FocSIX3タンパク質のプロセシング機構を明らかにするとともに、14 kDaおよび12 kDaタンパク質の作用機構を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「その他」に計上していた「ゲノム解析の委託」が予定よりも少額になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の物品費として使用する。
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