1. 最終年度に実施した研究成果 1)次世代シーケンサーによるタマネギ乾腐病菌(FOC)4 Mb染色体のde novo シーケンシング解析を行った結果、本染色体が病原性染色体であることが強く示唆された。2)4 Mb染色体に座乗するエフェクター候補遺伝子は、いずれも感染したタマネギ体内で発現することを明らかにした。3)エフェクター候補遺伝子の有無に基づいてFOC分離菌株の系統解析を行った結果、エフェクター候補遺伝子の保持パターンと病原性・宿主特異性との間に相関が見られた。4)タマネギの茎盤組織内でFOCが分泌するFocSIX3タンパク質のプロセシングを明らかにした。5)酵母ツーハイブリッド解析の結果、プロセシング後のFocSIX3タンパク質はホモダイマーを形成することが示唆された。
2. 研究期間全体の研究成果 1)FocSIX3がFOCの病原性に必須であることを明らかにした。FocSIX3は、タマネギ組織内で分泌された後にプロセシングされ、さらにホモダイマーを形成することが示唆された。2)FocSIX3遺伝子の特異的塩基配列を標的にした定量PCR法を確立した。3)次世代シーケンサー解析によって、53個のFOCエフェクター遺伝子候補を選抜し、それらの多くがFOCの4 Mb染色体に座乗することを明らかにした。4)FOCの4 Mb染色体が病原性染色体であることを強く示唆するデータを得た。5)エフェクター候補遺伝子の保持パターンと病原性・宿主特異性との間に相関が見られたことから、これらの遺伝子がFOCの病原性および宿主特異性に関与していることが推察された。以上のように、本研究によって、これまでまったく知られていなかったFOCのエフェクターおよび病原性染色体について多くの知見が得られた。とくに、エフェクター候補遺伝子の保持パターンとFOC菌株の病原性・宿主特異性の関連性を新たに見出したことは本研究の特筆すべき成果である。
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