研究課題/領域番号 |
26450059
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 一実 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (90390880)
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研究分担者 |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20579263)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物病原菌 / ホメオボックス遺伝子 / 病原性発現 / 付着器形成 / 付着器侵入 / 遺伝子破壊 / バイオトロフィー / ネクロトロフィー |
研究実績の概要 |
これまでに選抜されたウリ類炭疽病菌の病原性欠損変異株の1つであるPath-9株において,導入遺伝子近傍の配列をシーケンスし,ホメオボックス遺伝子CoHox1を同定した。Path-9株は宿主葉への接種試験では病斑が認められず,有傷接種においても病斑がほぼ認められないなど,病原性が顕著に低下していた。一方,ガラスおよび人工セルロース膜上における形態分化は野生株と大きな差異はなく,セルロース膜への侵入も確認された。また,ウリ類炭疽病菌のゲノム情報をさらに詳細に解析したところ,本菌はCoHox1以外に少なくとも9個のホメオボックス遺伝子を有することが明らかとなった。 ウリ類炭疽病菌104-T株のCoHox1遺伝子破壊株を作出した。CoHox1遺伝子破壊株のガラスおよび人工セルロース膜上での分生胞子発芽,付着器形成および侵入菌糸形成は野生株104-T株との違いは認められなかった。しかし,宿主キュウリ葉を用いた病原性試験では病原性の顕著な減少が認められた。また,胞子懸濁液接種7日後の宿主葉を脱色して感染過程を詳細に観察した結果,104-T株では宿主細胞内に蔓延していたのに対して,CoHox1遺伝子破壊株では侵入菌糸の形成は認められるものの,宿主細胞内での進展が観察されなかった。これらの結果から,CoHox1遺伝子破壊株は侵入能力を保持しているが,宿主内での侵入菌糸のbiotrophic phaseからnecrotrophic phaseへの移行に欠損がある可能性が示唆された。 さらに,CoHox1遺伝子にGFP遺伝子を融合させたプラスミドを構築し,CoHox1遺伝子破壊株に導入して相補株を作出した。現在,CoHox1遺伝子産物の細胞内局在を蛍光顕微鏡で観察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していた研究実施計画のうち,相同性組換えによるCoHox1遺伝子破壊株の作出および遺伝子破壊株の表現型の解析(培地上の菌そう生育,胞子形成,分生胞子の形態分化,宿主キュウリ葉に対する病原性,宿主植物上での形態分化)はほぼ終了し,成果が得られた。また,GFP遺伝子を融合したCoHox1遺伝子相補株の作出に成功し,現在CoHox1遺伝子産物の細胞内局在を蛍光顕微鏡で観察している。 さらに,ウリ類炭疽病菌のゲノム情報をさらに詳細に解析したところ,本菌はCoHox1以外に少なくとも9個のホメオボックス遺伝子を有することが明らかとなった。平成27年度から実施する計画であった,他のホメオボックス遺伝子の機能解析のうち,CoHox3遺伝子の破壊株を作出した。CoHox3遺伝子破壊株はガラス面上で奇形付着器を形成し,セルロース膜へはまれに侵入が認められた。このことから,CoHox1遺伝子とCoHox3遺伝子はそれぞれ感染過程で異なる機能を有していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はおおむね順調に進展していることから,平成27年度は当初の計画通り進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
接種・発病用人工気象器については当初平成26年度の購入を当初想定していたが,型式の設定に手間取り3月の発注となった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費のうち設備備品については,当初計画していた接種・発病用人工気象器,薬用ショーケース,微量冷却遠心器の購入に充てる予定である。
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