研究課題/領域番号 |
26450060
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
南 栄一 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 上級研究員 (70373256)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GFP / 蛍光観察 / 核局在 / いもちエフェクター / 遺伝子破壊 / パーティクルガン法 |
研究実績の概要 |
細胞外分泌シグナルを有しかつ核局在が予想されるエフェクター候補遺伝子23種類すべてについて、シグナルペプチドを除いた領域のC末にGFPを融合させた遺伝子を35Sプロモーターの下流に連結したプラスミドを作成した。これを順次パーティクルガン法によってタマネギ表皮細胞あるいはイネ葉鞘裏面細胞に導入した。暗黒化、25℃で24時間保温したのち蛍光顕微鏡によりGFPの局在を解析した。その結果、ME0008, ME0014, ME0032, ME0034についてはタマネギ、イネ両方で明瞭なGFPシグナルのイネ細胞核への局在が観察された。またME0009はタマネギ表皮細胞では核局在傾向が観察できたが、イネ葉鞘裏面では蛍光それ自体が極めて弱く、イネ細胞内で特異的にタンパク分解が起きている可能性が示唆された。この直接導入法によってイネ細胞核に局在すると判断されたエフェクターME0008, ME0014, ME0032, ME0034についてそれぞれ遺伝子破壊のためのバイナリーベクターを作出した。現在順次遺伝子破壊系統の作出を進めており、現在までにそれらのベクターをアグロバクテリウムに導入済で、さらにME0014については多数の独立した遺伝子破壊系統を得ることに成功した。また、ME0008についても少なくとも1系統の遺伝子破壊系統を得た。得られた遺伝子破壊系統を順次イネ葉鞘に接種し、36~48時間後における侵入程度を評価したところ、ME0014破壊系統では野生型に比較してほとんど差が見られなかったが、ME0008の破壊系統ではわずかながら侵入の遅延が観察された。また、核局在と判定した4種のエフェクター遺伝子を恒常発現型プロモーター支配下に発現する組換えイネを作出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初方針を若干変更してより短時間でエフェクタータンパク質候補23種類のすべてについてタマネギおよびイネ細胞内における局在解析を終了することができた。よって26年度に計画していたことはすべて終了した。さらに核局在候補として最終的に選定した4種類の遺伝子すべてについてその破壊のためのバイナリーベクターを作出したこと、そのうちの2種類については実際にいもち病菌に導入して遺伝子破壊株を単離することに成功したことは当初27年度に計画していたものであり、予定以上の進捗と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ME0014以外の5種類のイネ核局在エフェクター候補遺伝子について順次遺伝子破壊株を作出し、その病原性を葉鞘接種法ならびにイネ葉身噴霧もしくは滴下接種法によって評価する。これによって病原性に有意な低下がみられた遺伝子についてはその機能をさらに明らかにするために、その破壊株と正常株を接種したイネの遺伝子発現の差異をイネオリゴアレイによって解析する。あわせて、今回選抜した6種類の候補遺伝子の産物が実際の感染過程においていもち病菌からイネ細胞核に移行するか否かを明らかにするために、プロモーター領域およびタンパクコード領域までのDNA断片と赤色蛍光タンパク質mCherryとの融合遺伝子を作出し野生型いもち病菌稲86-137に導入して、罹病性イネの葉鞘に接種し蛍光の局在を組織学的に解析する。26年度に作出を開始したエフェクター遺伝子の恒常発現イネについて、イネいもち病菌およびそれ以外のイネ病原に対する応答性を明らかにする。26年度に作出を開始したエフェクター遺伝子の恒常発現イネについて、イネいもち病菌およびそれ以外のイネ病原に対する応答性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の予定以上の進捗により、成果報告をすべての遺伝子破壊系統の病原性評価が終了した時点で行うこととしたため、当初予定していた学会旅費が未使用となった。また、遺伝子破壊用ベクターの作出が予想以上に順調に進捗したのでそれに要する試薬を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
イネ側の遺伝子発現変化を詳細に解析するためにイネオリゴアレイによる解析をタイムコースを増やすなど一層充実させることとし、その費用に充当する予定である。
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