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2016 年度 実施状況報告書

ペクチンオリゴ糖が誘導する植物根の伸長促進作用メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 26450061
研究機関弘前大学

研究代表者

濱田 茂樹  弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90418608)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードイネ / ペクチン / 根の伸長 / 病害応答
研究実績の概要

本研究では、リンゴ由来ペクチンオリゴ糖(アップルペクチン)を幼少期のイネに施用することで根の伸長が促進することを見出し、そのメカニズム解明を試みている。無菌状態の寒天培地上でもペクチン処理による根の伸長が見られたことから、植物のペクチン分子に対する直接的な応答であることが予想された。興味深いことに、ペクチン処理は根の伸長のみならず、いもち病菌に対する病害耐性も向上させていることがわかった。30個体中の第一葉に現れる病班をカウントしたところ、グルコースを添加したコントロールでは約70%程度の葉に病班が出たのに対して、ペクチン添加では10%以下に抑制された。根の伸長メカニズムについては、これまではプロテオーム解析を中心にペクチン処理により発現量変動する根由来のタンパク質に焦点を当て解析してきたが、捉えきれない微量タンパク質についても解析対象にするため、 mRNA レベルでの解析を目的として研究を行った。0.25%グルコースおよび0.25%ガラクツロン酸添加の寒天培地で生育させたイネの根から RNA を抽出し、次世代シーケンスを用いた mRNA-seq 解析を行った。その結果、ペクチン処理により全体としてはリグニン生合成系の発現が向上していた。また、個別遺伝子の比較をしたところ、発現量に 10 倍以上の差がある遺伝子として、数種の細胞壁受容体型プロテインキナーゼの他、オーキシン関連遺伝子などシグナル応答に関する候補遺伝子を見出した。さらに、多くの病傷害応答タンパク質(PR protein) も発現量が増大しており、上記のペクチン処理による病害耐性を裏付ける結果が得られた。一方、走査型電子顕微鏡による形態観察の結果、ペクチン処理のイネ根は冠根の伸長は促進されるが側根の伸長はむしろ阻害される傾向にあった。また、根の表面構造にも大きな違いが見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度研究計画では、ペクチンオリゴ糖が誘導するイネ根における遺伝子発現および根の組織観察を計画した。プロテオーム解析で得られたこれまでの成果をもとに、発現量の異なるタンパク質をコードした遺伝子について RT-PCR による半定量解析を行った。さらに、次世代シーケンスによる mRNA-Seq 解析を実施することで、これまで捉えきれない多くの候補タンパク質を同定することができた。ペクチン分子に対する植物の応答に関する重要な情報の蓄積が出来たと考える。また、ペクチン処理による病害抵抗性誘導という予想外の展開を見出せたことは、今後の研究に広い展開をもたらす結果である。根の組織観察についても、走査型電子顕微鏡を用いた観察を行い、形態上の比較を行った。以上のように、当初の計画に従い、予定通りに実験が遂行できていることから、順調に進展しているものと判断する。

今後の研究の推進方策

28年度に実施した mRNA-Seq の解析結果をもとに、根におけるペクチン応答遺伝子の発現量の解析を real time PCR を用いて行う。既に、一部の遺伝子については計画を遂行している。特に、細胞壁受容体型プロテインキナーゼや、WRKY 転写因子などの発現量に着目し、ペクチン分子に対する根の伸長と病害抵抗性との関連性について解析を進めたい。そのために候補遺伝子については、TOS17 レトロトランスポゾンイネ変異体による欠損体を用いて、ホモ個体の選抜およびペクチンに対する応答性を確認する予定である。また、顕微鏡による組織観察も更に詳細に検討したい。

次年度使用額が生じた理由

顕微鏡による形態観察として、包埋切片を用いた組織染色や蛍光色素染色など高額試薬を用いた実験を想定していたが、28年度は大学の既存設備にある走査電子顕微鏡による形態観察を行ったことから、予定していた試薬の購入を行わなかった。また、プロテオーム解析の結果にもとづいた多種の候補遺伝子の発現解析を行う予定だったが、mRNA-seq 解析を先行し、その結果も踏まえたうえで遺伝子発現定量解析を行うこととしたため、高額な消耗品の使用が少なかった。次年度は、リアルタイムを用いた遺伝子発現の定量解析やゲノム抽出による変異体選抜を行う。それに用いる酵素などは、必要時の購入が望ましいため次年度に繰り越すこととした。

次年度使用額の使用計画

計画通り、リアルタイム PCR 法を中心とした遺伝子発現解析試薬のほか、候補遺伝子のクローニング用の試薬、ゲノム抽出とイネ変異体選抜のための遺伝子試薬を中心に使用する予定である。また、その他の一般生化学試薬の購入の他、包埋切片を用いた組織染色による組織観察を行う場合には、それらに必要な試薬購入にも用いる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Purification and characterization of a novel extracellular neutral metalloprotease from Cerrena albocinnamomea.2017

    • 著者名/発表者名
      Hamada, S., Kubota. K., and Sagisaka, M.
    • 雑誌名

      J. Gen. Appl. Microbiol.

      巻: 63 ページ: 51-57

    • DOI

      10.2323/jgam.2016.07.006

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [図書] 地方創成に関わる生物工学の取り組み 地域生物資源産業化事例集2016

    • 著者名/発表者名
      濱田茂樹
    • 総ページ数
      130
    • 出版者
      三恵社

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公開日: 2018-01-16  

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