研究課題
本研究では、リンゴ由来ペクチンオリゴ糖(アップルペクチン)を幼少期のイネに施用することで根の伸長のおよびごま葉枯れ病菌に対する感染耐性が向上することを見出した。そこで、ペクチンが植物に与える生理活性について解析を行った。土ポットに植えたイネにメチル化度、重合度の異なるペクチンを投与し、それぞれ根の乾燥重量を測定することで、根の生長におけるペクチンの効果を解析した。また、微生物の影響を受けないよう無菌状態で、ペクチン、ペクチン酸、ガラクツロン酸等を含むアガロース培地を用いて根の伸長を確認した。その結果、ペクチンの最小構成単位であるガラクツロン酸および無菌環境下でも根の伸長が促進されたことから、植物にはガラクツロン酸単位で認識され、ペクチン分子をシグナル分子として直接認識していることが示唆された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)で根の表面および割断面を観察した結果、ペクチン処理による不定根の伸長促進と側根の伸長抑制が確認できたが、根の細胞の大きさに違いは見られなかったことから、細胞肥大による伸長ではないと考えられる。次に根から mRNA を抽出し、次世代シーケンサーによる RNA-seq の網羅的発現解析を行った。それらの結果をもとにreal-time PCR によって、受容体関連遺伝子や病傷害応答性遺伝子の発現量を定量的に調べた。細胞壁結合型の受容体分子と考えられる wall-associated kinase 3 (WAK3) の発現量が7.9倍に増加したことから、WAK3 がペクチン分子の受容体候補であることが推察された。根や葉では、 WRKY や peroxidase など、いくつかの病傷害応答性遺伝子の発現量がペクチン処理により増加していることが分かった。このことから、ペクチンの投与はイネの根の伸長だけではなく、システミックな病傷害応答にも関与することが示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Plant Physiology
巻: 175(4) ページ: 1608-1623
https://doi.org/10.1104/pp.17.01388