研究課題/領域番号 |
26450062
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長澤 淳彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60616431)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウコンノメイガ / ダイズ / アカソ / 寄主転換 / 産卵 |
研究実績の概要 |
本研究では、ダイズ害虫であるウコンノメイガが、越冬世代と夏世代でアカソ(イラクサ科植物)とダイズの間を寄主転換する要因を明らかにすることを目的としている。平成26年度は、直接の産卵選択によって、寄主転換が起こるという仮説を検証するため、幼虫期の食草や季節の違いによって産卵植物の選択に影響があるか試験したが、データのばらつきが大きく、結果は不明瞭であった。このため、試験条件を見直し、平成27年度には、供試虫は個体ごとに産卵を確認し、産卵開始後2日目、供試植物は、ダイズ展開葉上から2枚目、およびアカソ上部の展開葉8~12枚を用いて同様の産卵選択試験を行った。その結果、幼虫をアカソで飼育して得た成虫は、7月のアカソよりダイズに有意に多くの産卵を行った。一方、8月および9月の植物ではいずれの植物で飼育した成虫も産卵数に有意な違いはなかった。7月の結果は、夏季にダイズを寄主とする事実を支持しているが、アカソにもある程度の産卵は行われたので、アカソからダイズへの移動を十分に説明できない。したがって、寄主転換には産卵選択よりも、植物に到達する段階の誘引または忌避が影響する可能性が考えられた。 また、研究計画では寄主転換の原因となる行動因子を明らかにすることを目標としていたが、生態的な意義についても調べるため、本年度は飼育試験を行い、寄主転換によって発育に有利な植物が選択されているのか確かめた。その結果、幼虫の発育に大きな違いはなく、発育に有利な植物を選ぶよう寄主転換が起こっているわけでないことが明らかになった。一方、既報でも採集時の結果でも、アカソではダイズより著しく寄生率が高かったことから、寄生を避けるために寄主転換が行われていることが考えられた。本年度の研究では、生態的な意義および、否定的結果ではあるが、寄主転換の要因の一部を検証できたので、論文発表するために準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の試験について、試験条件を見直し、平成27年度に再びやり直したため計画より進行は遅れている。産卵試験と同時に誘引試験も行う予定としていたが、試験時期を逸したことと、予算の都合から、本試験は翌年に行うこととし、予備試験として植物からの揮発成分の捕集、分析方法を検討するまでに留めた。したがって、当初の計画よりは遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、2年間で寄主転換を引き起こす行動的な要因を特定し、平成28年度には行動を制御する化学的因子の解明を予定していたが、現在のところ行動的な要因の解明には至っていない。産卵選択では説明できないことが明らかになったため、今後は揮発成分に対する誘引および忌避行動に絞って試験を行うことになるので、行動試験を行いながらGC-MSによる分析を同時に進行する予定である。野外のシーズン(7月)前に、人工気象室内で育成した植物を用いて、オルファクトメーターおよび風洞による誘引試験の方法を確立しておき、7~9月のアカザあるいはダイズに対する誘引行動を、各植物で飼育した個体で試験する。誘引あるいは忌避行動が見られたら化学分析を行い、候補物質とその変化について調査しておき、植物の得られない冬季にその成分を用いた行動試験を行う。 また、平成27年度の結果から寄主転換は寄生を避ける意義があることが考えられたことから、寄生者および被寄生個体を忌避する可能性を予想して、それらに対する忌避行動がないかについても確認する計画である。
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