研究課題/領域番号 |
26450065
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉浦 真治 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70399377)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 被食防衛機能 / 鱗翅目 / 捕食性昆虫 |
研究実績の概要 |
鱗翅目では幼虫の体表に二次刺毛(いわゆるケムシの毛)をもつ種がいるが、しばしば大発生し農林業に重要な被害を与えることがある。大発生の要因として、二次刺毛が被食防衛機能を果たすため天敵からの捕食を逃れている可能性が指摘されている。しかし、二次刺毛の被食防衛機能を裏付ける実験的証拠は乏しい。本計画では、二次刺毛の被食防衛機能について捕食性昆虫を使って検証する。本年度(初年度)は、クロカタビロオサムシ(オサムシ科)の成虫に、二次刺毛の長さの異なる5種(テングチョウ、ニトベエダシャク、シロヘリキリガ、マイマイガ、クワゴマダラヒトリ)の幼虫を与え、これらに対する攻撃・捕食行動を解析した。クロカタビロオサムシ成虫は大顎で鱗翅目幼虫を捕らえ摂食する。結果、背面の二次刺毛が捕食者の大顎よりも長いクワゴマダラヒトリへの成功率は46.8%と低かったが、二次刺毛がより短い他4種への攻撃成功率は93.6-100%と高かった。クワゴマダラヒトリを捕獲するには大顎による平均6回の攻撃が必要であったが、他4種へは平均1回の攻撃で捕獲に成功していた。ただし、マイマイガ幼虫については、テングチョウ、ニトベエダシャク、シロヘリキリガ幼虫よりも攻撃回数がやや多い傾向にあった。さらに、クワゴマダラヒトリ幼虫の二次刺毛を捕食者の大顎よりも短く刈ることで、攻撃成功率は95.7%に上昇し、捕食成功にいたる攻撃回数は平均1回に減少した。 アオカタビロオサムシ(オサムシ科)を使用して、クワゴマダラヒトリやマイマイガにおける捕食行動についても観察した。結果、クロカタビロオサムシと同様に、大顎より長い二次刺毛をもつ幼虫を攻撃する場合、その捕食成功度は低下する傾向にあった 以上の実験・観察結果により、クワゴマダラヒトリ幼虫のように捕食者の武器よりも長い二次刺毛を持つ場合、十分な物理的防衛機能が働いていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに材料を確保し、室内実験を行うことができた。また、研究成果についても論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、2年目は天敵として捕食寄生性昆虫であるギンケハラボソコマユバチを用いて、鱗翅目幼虫の二次刺毛の役割を明らかにする。具体的には、実験室において直径36 mm深さ10 mmのプラスチック容器の中で実験を行う。コマユバチ、ケムシ2種(マイマイガ、ギンケハラボソコマユバチ)、二次刺毛を短くカットしたケムシ2種、イモムシ1種(ハスモンヨトウ)、各種50個体(様々な体サイズ)を用意し、コマユバチ1個体とケムシ1個体(またはイモムシ1個体)を容器の底に配置し、コマユバチによる産卵行動をビデオカメラによって3時間30分撮影する。産卵の正否を記録し、成功に至った場合はその攻撃回数や時間を記録する。産卵が見られた場合は翌日に幼虫を解剖しコマユバチの卵の有無を確認する。捕食(産卵)成功率を幼虫の種間や二次刺毛処理で比較する。産卵の正否を応答変数、鱗翅目幼虫のタイプ、体サイズを説明変数としてロジスティック回帰分析で統計ソフトRを用いて解析する。また、攻撃にかかる時間(または回数)を応答変数とする一般化線形モデルを用いた解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、予定していたほど昆虫の飼育量がなく、そのため飼育容器などの消耗品の購入や人件費および謝金の使用を翌年度以降に回すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、昨年度よりは比較的実験が困難であると予想されるため、試行錯誤に多くの実験や昆虫飼育量の増大が見込まれる。これに昨年度生じた消耗品の購入費や謝金などにあてる予定である。
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備考 |
YouTube動画 題目:ケムシは長い「毛」で捕食者から身を守っている。 Title:Caterpillar hairs play an important role as physical defences against predator attacks.
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