マルカメムシの卵寄生蜂 マルカメクロタマゴバチおよびカメムシトビコバチの野外における行動を明らかにするために、野外で寄生活動を調べるとともに室内で種間競争を調べた。その結果、マルカメクロタマゴバチは夜行性であるが、カメムシタマゴトビコバチは昼行性であった。7-8月に2種が同じ寄主卵塊を寄生している共寄生卵塊率が高くなり、寄主卵塊上で2種の種間競争が生じていることが明らかになった。種内競争として、1)マルカメクロタマゴバチの寄主防衛行動によるカメムシタマゴトビコバチの排除、2)共寄生による幼虫間の競争、3)カメムシタマゴトビコバチによる刈るか目クロタマゴバチ幼虫や蛹への2次寄生が生じる。しかし、マルカメクロタマゴバチは、産卵終了後寄主卵塊を離れること、カメムシタマゴトビコバチはマルカメクロタマゴバチがいると寄主卵塊近くで休息し、後者が去った後寄主への開始すること、のためマルカメクロタマゴバチの防衛行動によりカメムシタマゴトビコバチの寄生が排除されることがないことがわかった。2種が卵を産下したほとんどの寄主からカメムシタマゴトビコバチが成虫として羽化したことから、カメムシタマゴトビコバチの方が幼虫間競争に強いことがわかった。マルカメクロタマゴバチの一齢幼虫は大あごが発達しており、他個体をかみ殺すがカメムシタマゴトビコバチでは大あごは発達していない。どのようにしてカメムシタマゴトビコバチが他者を排除するのかは明らかでない。さらに、カメムシタマゴトビコバチはマルカメクロタマゴバチの幼虫や蛹に2次寄生することができた。他種の幼虫や蛹に寄生したマルカメクロタマゴバチの卵の約50%が成虫として羽化したが、その多くがオスであった。カメムシタマゴトビコバチは未寄生寄主とマルカメクロタマゴバチ幼虫あるいは蛹がいる寄主とを識別し、後者によりオスを産むことが示唆された。
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