研究課題/領域番号 |
26450069
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石井 貴広 琉球大学, 農学部, 助教 (70450393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オーキシン / 生合成 / YUCCA / 除草剤 / 植物成長調節剤 / スクリーニング / 天然物 |
研究実績の概要 |
オーキシンIAAの生合成を制御するという利点を活かした農薬の開発例は過去にない。本研究では、新しいタイプの除草剤や植物成長調節剤などの開発につながる発展型阻害剤の取得を目指している。 研究代表者が申請時とは研究分野が異なる機関に移動し、一から研究室の立ち上げを行う必要があったため、研究設備環境が著しく異なってしまい、研究計画調書作成時の計画を大幅に変更・修正する必要が生じた。そのため、最初は本研究を遂行するために最低限必要な装置や器具の導入および試薬の購入などに優先して時間を費やし、基盤整備を行った。 当初は、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC-MS/MS)を用いて、IPyA(インドールピルビン酸)などの微量なIAA生合成中間体類の植物内生量を網羅的かつ選択的に分析することで、既存のものとは異なるタイプの阻害剤を探索する予定であった。しかしながら、現有設備では全く対応ができなかったため、IAA主要生合成酵素の一つで、IPyAからIAAの変換反応を担うYUCCA酵素に作用する特異的な阻害剤の探索に急遽変更した。 本年度は、より酵素活性の高いYUCCA酵素を発現・精製することに成功した。また、蛍光検出器を備えたHPLC装置を導入することによって、微量なIAAを検出することも可能となり、新たな阻害剤スクリーニング評価系を構築することができた。さらに、インドール系およびトリプトファン系の合成化合物と海洋生物から単離した天然物を含む低分子有機化合物ライブラリーからスクリーニングを行った結果、数少ないYUCCA酵素阻害剤であるyucasinと同等の阻害活性を示し、既知の阻害剤とは異なる化学構造を有する化合物を取得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の大幅な変更があったものの、新たに設定した初年度の目標に到達することができた。目的の阻害剤を探索するための新たなアッセイ系には、1)YUCCA酵素の発現・精製、2)酵素反応条件の改良、3)蛍光検出器を備えたHPLCによる微量IAAの検出法の確立という3つの課題を克服する必要があったが、初年度中に全てを達成することができた。 また、構築したアッセイ系を活用して保有する化合物ライブラリーから探索を行った結果、紅藻類に含まれる一部の含ハロゲンニ次代謝産物に顕著な阻害効果が見出された。今までに報告されたものや取得してきたものとは化学構造が全く異なっており、新しいタイプの阻害剤を発見することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
既知のものよりも高い活性を示す発展型阻害剤ならびに既存のものとは異なる化学構造を有する新しいタイプの阻害剤の取得に向けて、次年度も残りの化合物ライブラリーから探索・スクリーニングを主に継続して行う予定である。探索源として今までに着手したことのない海洋天然物のライブラリーより、さらに有望な阻害剤候補がみつかる場合は、研究代表者が保有する海洋生物由来の多様な抽出物ライブラリーからの探索も検討する。 また、取得した候補物質については、阻害剤としての安定性や溶解性などを調べるとともに、実際の植物を用いて阻害効果を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初とは研究計画が大幅に異なってしまい、導入する予定の高額装置を変更した結果、想定していたよりも物品費の支出が少なくなり、差額が生じてしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に引き続き、YUCCA酵素を用いた阻害剤のスクリーニングを主に行う予定である。そのため、YUCCA酵素の調製や酵素反応に関わる器具および試薬や溶媒など、アッセイを行う上で欠かせない消耗品が主要な支出となる。また、IAA等の微量成分を検出するためには、HPLC装置は必要不可欠であるが、現有の装置はかなり古いため不具合が生じてきている。特にHPLCポンプを新たに購入する必要があるため、それに伴う経費を計上する予定である。
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